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お不動さまとビー玉

 山からお不動さまが見守っていると祖母はよく話していました。祖母が山の神様というときにいったい何を指しているのか定かでないことは多かったのですが、だいたいはお不動さまのことを指していたはずです。 私の実家は山形の山間の集落で、昔はお不動さまの参拝者により宿場町として賑わっていたそうです。今はそんな面影は全く残っておらず、ちらほらと民家があるのみですけれども。

 お不動さまにまつわる不思議な話はたくさんありますが、自身で体験した話を一つ。

 小学生のころ、夏休みのある日、妹と喧嘩して祖母に叱られた私は、むしゃくしゃして妹の大事にしていたビー玉をいくつかか掴むと山に向かって力一杯投げ捨てました。数色の模様が入ったきれいなビー玉でした。妹は探したものの見つからずにめそめそ泣き、私は両親からこっぴどく叱られたものです。

 数日後、町内会の私の住む地域の組に、お不動様へと参る参道の草刈りの順番が回ってきました。早朝から長袖に長靴、手には鎌を持って、初めて参道を登りました。参道は細くほとんど獣道であり、小川に沿って山を登りながら鎌で草刈りをするのは小学生にとっては辛い作業で汗だくになりました。しゃべることもなくなり、下を見て黙々と草を刈りながら、山を登っていると、父が肩を叩いてきました。

「ほら見れ、あれがお不動さまだべ」

 父から見ろと言われて気づきました。目の前に目的のお不動様の小さな祠がありました。ほっとしてお不動様にお参りしようとすると、思わぬ物が目に入りました。

「あ」

 お不動さまの足元には、見覚えのあるビー玉数個が転がっていたのでした。お不動様は小さな石像でしたが、背に焔を背負い、怒りの形相を浮かべている姿に私は、自分が睨みつけられている気分になりました。

 思わずお不動様に、ごめんなさいと謝ったのでした。

 そのビー玉は今でも妹がお守りとして大事にしています。

ちょっと不思議を狙うのは難しいですね。草刈り当番は年に一、二回は回ってきてたと思う。

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