沢遊び
小学校の夏休み。僕らは毎日のように沢に遊びに行っていました。
二メートルくらいの小さな滝があり、滝の下には数人が泳げるほどに水が溜まっているお気に入りの場所があったのです。
いつも順番に滝の上から飛び込むのですが、そんなに高くないとはいえ、初めは飛び込むのは怖いものです。
僕の弟は、小学二年生で仲間の中では一番年下、みそのような扱いでしたが、その日初めて、滝に連れてきたのでした。ああ、みそというのは、地域によって呼び方が違うかもしれませんね。鬼ごっこの鬼を免除するような特別扱いですね。小さすぎてまだ遊び相手として認めてもらっていなかったんです。
案の定、弟は、滝から飛び込むのを怖がっていました。
僕は母親からくれぐれも、弟の面倒をしっかり見るようにと、釘を刺されていたので、危ないことはしない分には安心だったのですが、それでも弟が滝の上から下を見て何度も引き返す様子を見ていらいらしてきました。
どれ、背中を押してやろうと近づくと、弟はしゃがみこんで大声で泣き出してしまいました。
泣きながらで聞き取りにくかったのですが、弟は、どうも沢から出ろと言っているようでした。赤いとも言っています。
尋常でないその様子に皆、沢から出てきました。そして、その日はそのまま、帰ることにしたのです。
家で落ち着いた弟に聞いてみると、弟には水面が真っ赤にそまっているのが見えたそうです。もちろん、僕にも友達にもそんなものは見えていませんでした。
数日後ですが、町から沢に釣りをしにきた男性が、沢で倒れているがを発見されました。その場所は、まさにあの滝の下でした。滑って転んだのか、頭を石に打ちつけて、かなりの流血があったと聞きます。
僕らも流石に怖気づいて、その年は沢では遊びませんでした。
次の年には、気にせず遊んでいたんですけどね。




