第96話「ストッキングを脱ぐところはガン見してたけどね」
「は、葉桜君も、一緒にやりましょう……」
陽が演者になることだった。
それにより、佳純は喜び、陽は肩を落とす。
そして、凪沙は満足そうに頷いた。
「さて、話がまとまったところで本日のお題を決めようか」
凪沙はパンッと両手を叩き、笑顔を三人に向ける。
「スイーツの早食い――はい、冗談です」
しかし、お題を言った直後にまた佳純と真凛にジト目を向けられたので、即座に口を閉ざした。
佳純も真凛も、食べる時は上品に食べたい。
それなのに、食べる早さを競うようなものを提案されてしまえば、呑めるはずがなかった。
「凪沙にお題を決めさせてたら、私たちの身が持たないわ」
「そうですね、私もそう思います」
既に犬猿の仲に近いはずの佳純と真凛は、お互いの顔を見合わせて頷き合う。
どうやら、二人にとって凪沙は、若干敵ポジションになってしまったようだ。
「おかしい、二人にとって滅茶苦茶いい提案を通した功労者のはずなのに、扱いが酷い……」
「お前がふざけまくるからだろ……。それに、お題なんて突然考えるものでもない。とりあえず、動画映えする内容であることは前提だな」
陽は頭を既に切り替えており、どんな勝負がいいかを考える。
せめて事前にわかっていれば道具を持ち込めていたのだが、現在あるものではやれることは限られていた。
「猫の物真似を上手にできたほうが勝ち、とか? ほら、コスプレして猫ポーズを――」
「凪沙、いい加減にしないと後が怖いぞ?」
また真凛や佳純から睨まれるような提案をした凪沙に対し、陽は呆れながら注意をした。
「動画映えだけを考えれば、最高なのに……」
「その代償として、佳純と秋実を敵に回すことになるけどな」
拗ねた顔をする凪沙に対し、陽は若干呆れたような笑みを浮かべた。
そして視線を佳純たちに向けると、佳純たちは瞳に怒りを宿しながら凪沙を見ている。
「私、そういうの陽にしか見せないから」
「そうです、そういうのは――えっ、葉桜君には見せているのですか……?」
佳純に同調しようとした真凛だが、ふと引っ掛かる言葉があり、思わず陽を見てしまう。
「いや、なんで俺を見るんだよ……」
「葉桜君、猫がお好きですから……」
「だからやらせているって言いたいのか? 言っておくけど、佳純がコスプレしているところなんて見たことないぞ?」
「ストッキングを脱ぐところは、ガン見してたけどね」
「へぇ……?」
「佳純、お前余計なことを言うのはやめろ……!」
佳純の一言で真凛の目が据わったので、陽は慌てて佳純を止めた。
しかし、真凛は今もなお、陽のことを追求するように見つめている。
「おい凪沙、なんで俺が責められる状況になるんだ……?」
真凛の視線に困った陽は、助けを求めるように凪沙を見た。
そんな視線を受けた凪沙は、ニヤッと笑みを浮かべる。
それにより、陽は凪沙に話を振ったことを後悔した。
お久しぶりです!
中々更新できなくて申し訳ないですが、
楽しんで頂けますと幸いです!







