第90話「理不尽な体」
「――それで、真凛ちゃんはいったいどんな撮影をしたいのかな?」
四人で移動する中、まだ動画の趣旨を聞いていなかった凪沙は隣を歩く真凛にそのことを尋ねた。
陽もまだ真凛から聞いていなかったので、黙って真凛の言葉に耳を傾ける。
真凛は三人の注目を集める中、かわいらしい笑みを浮かべて口を開いた。
「スイーツ巡り……をしたいと思っています」
「「――っ!?」」
とても嬉しそうに発せられた悪気のない言葉。
しかし、その言葉を聞いた佳純と凪沙は、まるで硬直したかのようにビタッと止まってしまった。
そして、ギシギシと音が聞こえてきそうな動きで陽の顔を見上げてくる。
「聞いてない、んだけど……?」
「俺も初耳だからな? 別に、佳純も甘いもの大好きなんだから問題ないだろ?」
恨めしそうな目で見つめてくる佳純に対し、陽は不思議そうに首を傾げた。
幼い頃から佳純はよくケーキを食べていたし、陽があげると言うと大喜びして食べていたくらいに甘いものが好きだ。
だから何も問題はないように思えるのだが、佳純は更に恨めしそうに陽の顔を見つめてきた。
「好きだからって、よくない場合もあるの……!」
「ほんとだよ……! どう責任を取ってくれるつもりなんだ、陽君……!」
佳純だけでなく、何やら凪沙も陽のことを責めてきている。
どうやら凪沙にとってもよくないようだ。
「何か問題か? スイーツを食べる女子の動画って男受けしそうだけど?」
「そういう話はしてない……!」
佳純と真凛がおいしそうにスイーツを食べる姿は絵になるな、と思った陽だが、佳純は神妙な顔つきで顔を覗き込んできた。
顔が至近距離にきたので、陽は思わず一歩下がってしまう。
「じゃあ、なんなんだよ?」
「そこは察してよ……!」
「普通にわかるでしょ……!」
陽が一歩下がると、一歩詰め寄ってくる佳純と凪沙。
二人が何を言いたいのか陽にはわからず、思わず真凛に視線を向けてしまうが――真凛も、状況がわかっていないようで困惑した表情を浮かべていた。
真凛は何か悪いことを言ってしまったのか、自問自答しているように見える。
「佳純はともかく、凪沙らしくないな。具体的に言ってくれよ」
「なんか今、馬鹿にされた気がする……!」
要領を得ないので凪沙にちゃんと説明をしろと陽が言うと、佳純が頬を膨らませてポカポカと胸元を叩いてきた。
どうやら自分じゃなく、凪沙に聞かれたのが気に入らなかったらしい。
「馬鹿にしてないって。それで、どうなんだよ?」
陽は佳純の手を優しく押さえ、凪沙へと尋ねる。
すると、凪沙はほんのりと頬を赤らめながらソッポを向いた。
しかし、ゆっくりと口を開く。
「走んないと、いけなくなるじゃん……」
「えっ?」
「だから、食べた分たくさん走んないといけなくなるでしょ……!」
「あぁ」
若干やけくそになっている凪沙の言葉で、ようやく陽は理解した。
スタイルがモデル並にいい佳純はともかく、普段暴れ回っている凪沙も気にしているようだ。
やはり、なんだかんだで凪沙も女の子ということらしい。
「別に、動画に映るのは佳純と秋実なんだから、凪沙は食べなくてもいいんじゃないか?」
「そんな殺生な!? 君は目の前でお預けをするというのか……!」
目の前で食べられると、必然自分も食べたくなってしまう。
それなのに我慢しろというのは、酷だと凪沙は訴えかけた。
「じゃあ、まぁ……頑張れ」
「陽君は鬼だよ……!」
凪沙はグッと恨めしそうに陽の顔を見つめる。
その表情からは、凪沙の中でかなり葛藤しているように見えた。
そんな凪沙を横目に、佳純はバッと真凛のほうを見る。
「てか、秋実さんは気にしないわけ……?」
元はといえば、真凛がスイーツ巡りを提案したことが事の発端なため、佳純は訝しげに真凛へと尋ねる。
しかし、真凛は不思議そうに首を傾げてしまった。
「気にするほど、でしょうか……?」
その真凛の反応を見た、佳純と凪沙に戦慄が走る。
二人は気が付いてしまったのだ。
真凛が、今まで食事制限などを一切してこなかったことに。
確かに真凛と佳純を比べれば、佳純のほうが細く見える。
しかし、それを差し引いても佳純は理不尽さを覚えずにはいられなかった。
そして、真凛が今まで食べてきたものが、いったいどこについてきたのかも安易に想像出来てしまう。
「私、秋実さんのことが嫌いになりそう……」
「なんでですか!?」
なんだかやるせない気持ちになった佳純がボソッと呟くと、真凛は思わず大声を上げてしまうのだった。
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