第23話「意外と相性がいい二人」
真凛の服について、意見をたくさんくださりありがとうございました!
「――お待たせしました」
土曜日――16時に待ち合わせをしていた陽が待ち合わせ場所で待っていると、最近よく聞いているかわいらしい声が聞こえてきた。
その声に反応し、陽が顔を上げると――肩の部分がフリフリとなった水色のシフォンワンピースを着た真凛が、笑顔で陽の顔を見上げていた。
頭には白色のつば広レディースハットを被っており、真凛の綺麗な金髪によく似合っている。
まさに清楚系美少女のような真凛を前にした陽は、思わずスマホへと視線を落とした。
「十分前か、さすが優等生だな」
「それは嫌味、なのでしょうか? まさか私よりも葉桜君のほうが先に来ていらっしゃるとは思いませんでした」
陽は待ち合わせ時間の三十分前に着いていたのだが、もちろん真凛はそれを知らない。
ただ、自分よりも早く来ていたことに対して純粋に驚いていた。
「まぁ、癖みたいなものだ」
「癖……?」
「気にするな。それよりもあまりのんびりとはしていられないから移動するぞ」
首を傾げる真凛に対し、陽は言葉を短く切ってタクシーを呼ぶ。
あまり悠長にしていられないのは、これから見に行く景色に時間制限があるからだ。
陽はまず先に真凛をタクシーへと乗らせる。
真凛は自分を先に乗せてくれたことでやはり陽は気遣いができる男だと思うが、陽が真凛を先に乗せた理由は別にあった。
彼女が乗っている最中陽はチラッと後方を見る。
そして、何事もなかったかのように真凛の後に続いてタクシーへと乗った。
「それにしても、朝からの待ち合わせではなかったことが意外でした」
タクシーで目的地へと移動する中、真凛はそう言って隣に座る陽の顔を見上げる。
てっきり真凛は朝から陽と出かけることになると思っていたのに、この前の電話で陽が指定した時間はこの時間だった。
それが本人には少しだけ腑に落ちていない。
「今回は遠出じゃないし、朝から俺といるのは負担だろ?」
「あっ……いえ、むしろ……」
陽の言葉を聞いた真凛は、気を遣ってもらえたんだと理解して咄嗟にそう口走る。
しかし、自分が無意識に言おうとした言葉に気が付き、慌てて口を閉ざした。
陽はそれに対してツッコミを入れることはせず、窓から見える景色へと視線を逃した。
そんな陽を、真凛は若干顔を赤らめながらジッと見つめる。
(むしろ、一緒にいることが心地良いです……なんて、言えるわけがないですよね……)
今の自分は陽のことを利用しているだけだ。
それなのに、誤解を生みそうな言葉を言えるはずがない。
何より、陽もそんな言葉を望んでいるわけではないと真凛にはわかっていた。
(それにしても、本当にお優しいですよね……。素っ気なく見えて、実は気遣いを凄くしてくれてます……。どうして、皆さんに素っ気なくされるのでしょうか……?)
ここ数日陽と一緒にいるようになって、真凛の中での陽の評価はガラッと変わっていた。
言葉遣いは悪いけれど、真凛の様子をよく気にかけている。
少しでも真凛が暗い雰囲気を出しそうになれば別の話題を振るし、真凛が他の男子に話しかけられて困っていればそれとなく会話に割り込んで追い払ってくれていた。
それが、真凜にとっては凄く有難かったのだ。
まぁ……陽はツンデレ、という真凛の考えは更に深まっているのだが。
しかし、だからこそ真凜は思う。
ここまで他人を気にかけることができる人間が、どうして他人を突き放すようなことをしているのか、と。
一番に思い浮かぶのは根本佳純の存在。
陽が他人を突き放そうとするのは、彼女が関わっているのではないかと真凜は睨んでいた。
「どうした?」
ジッと見つめていると、見られていることに気が付いた陽が真凜に声をかけてきた。
考えごとをしていた真凜は慌てて首を横に振り、何か誤魔化す話題はないかと陽の周りに視線を巡らせる。
そして、陽が肩からかける少し大きな鞄が真凛の視界に止まった。
「えっと、その鞄には何が入っておられるのでしょうか?」
「あぁ、これは……いや、なんでもない」
一瞬答えようとした陽だが、少しだけ思い留まって首を左右に振った。
それにより、完全に真凛の興味はそちらに移る。
男が訳ありな様子で誤魔化した――そのことについて真凜は、一つの答えを導き出した。
「もしかして……いかがわしいものですか!?」
真凜がそう言った直後、陽ではなく運転手が動揺をしてしまい、ハンドル操作が乱れて車が大きく左右に揺れる。
それにより小柄な真凛の体は振られ、陽の胸に飛び込む形になってしまった。
「あっ……」
思わずくっつく形になった真凜は、陽の胸に両手を添えた状態で恥ずかしそうに上目遣いで陽の顔を見つめる。
それに対して陽は、咄嗟に真凛の体に回してしまっていた手をどかし、顔を背けて再度視線を外に向けた。
そして、呆れたようにゆっくりと口を開く。
「お前、意外とむっつりだよな」
そう言われた真凛は、とてつもない恥ずかしさに襲われて反論をすることができないのだった。
――この時、真凜は動揺で気が付いていなかったが……実は、陽の頬は赤く染まっていた。
(感触、全然違うんだな……)
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