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友達の友達

書きたかったので、朔と瞬が教室で話しているときの岳と志奈乃の視点を書いちゃいました!


本編は明日投稿します!

朔を呼び出した手紙の文字は今思い出すと何処かで見たことがある気がする。


誰もいない下駄箱の近くで考え込んでいると、職員室側の廊下から不機嫌そうな顔のグレーアッシュの髪の女性がこちら向かってきた。


「朔とゲーセン行ったんじゃないの?」


河野志奈乃。小学生の時は髪色も黒で長さも短く身長も160センチ以上あったので男子の中では女男と呼ばれていたが、今は別人に見える。


他の学校では注意されるであろう髪色。少しだが化粧もしていて大学生に見えるほど大人っぽい。昔は馬鹿にされていた高い身長もさらに伸びてはいたが、今ではスタイルが良いとクラスの男子から絶賛されている。タイプは違うが、光と双璧をなす美少女と噂になっていた。

だが、光と付き合っている俺からすれば志奈乃がイメチェンしたところで特に興味はない。小学生のころは光と朔を含めた4人で遊んでいたが、俺とはほとんど話していなかった。志奈乃のことは光の親友で朔のことを好きな女の子という印象しかない。


「ああ、あいつは今呼び出されてるから待ってるんだ。だいたいなんでゲーセン行くの知ってんだよ?」


「教室であんな大声で話してたら聞こえる」


「大声?まあそれならいいけど」


それほど大きな声で話してた訳ではないが、朔の話となると志奈乃にはバレバレなのかもしれない。


「なあ、あんまり二人で話すこともないから言ってもいいか?」


「何?」


「俺は朔に彼女ができてほしいと思ってる。でも誰でも言い訳じゃない。俺に近づきたくて朔と仲良くなろうとする奴とか光の影口を言ってるやつとは付き合ってほしくない」


「急に何?そんなの当たり前じゃん」


「当たり前かもしれないけど小学校の時はそんな奴らばかりだっただろ」


だからこそ朔のことを本気で好きだった志奈乃が転校をした時は少なからずショックを受けた。だが、今は志奈乃以外にも朔のことを本気で思っている奴がいる。


「まあね」


「だから、朔のことを本気で好きなやつで良いやつなら俺は応援する。それがおまえじゃなくても」


「ああ、なるほどね。でもそれなら私でもいいってことだよね?」


「おう。だから俺は志奈乃も応援してる」


「岳って普通に良いやつだよね」


「急になんだよ」


「別に。光が選んだのもわかるなーって思っただけ。それよりも朔ちゃんは誰に呼び出されてるの?」


志奈乃が昔と変わらずに朔に好意があるのは間違いない。

素直に告白かもしれないと言ったら乗り込んだりするかもしれない。


「…ええっと、先生に呼ばれたんだよ。あいつ成績そんなに悪くないのになんでだろうな」


「へえ、じゃあ職員室にいるの?」


「ああ」


「私さっきまで職員室にいたんだけど」


「…」


「そもそも岳はなんでこんなところで待ってんの?待つなら教室で良いよね?」


まるで尋問でもされているかのように追いつめられる。


「…」


「なるほどね。教室に忘れ物したから取ってくる。鞄持ってて」


志奈乃は急に持っていた鞄をこちらに投げ教室の方に全力で走り出す。


「待て待て待て」


慌てて追いかけるが、全く距離が縮まらない。自分の分だけではなく朔と志奈乃の鞄も持ちながらとはいえ、バスケ部で毎日走り込みをしている俺と同じ速度で走っている。


「ああ、やっぱり教室なんだね。大丈夫、絶対にばれないように見るから」


軽くこちらを見ながら4階にある教室まで一目散に階段を駆け上っていく。


「そういう問題じゃないだろ。それに告白じゃなくてイタズラかもしれない」


「イタズラならそいつらをボコボコにしてさっさと3人でゲーセンに行けばいいじゃん。だいたいなんでついてくるの?」


いつのまにか志奈乃もゲーセンに行くことになっているが今重要なのはそこではない。


「何でって、お前朔のことだと暴走するだろ」


「そんなことないよ」


「全力疾走してる時点で信用できねーよ」


朔が教室に向かったのはつい先程。この速度で行ったら追いついてしまうかもしれない。


何とか教室には着いたが、ドアの前には既にいち早く教室についた志奈乃は既に聞き耳をたてていた。


「おい、行くぞ」

「ちょっと待って」


小声だがすごい剣幕で睨みつける志奈乃をみて教室で告白以外の何かが行なわれていることはすぐに想像できた。

気になり静かに教室の中を覗くと朔と、俺と同じバスケ部の近藤瞬がそこにいた。


部活の休憩中に志奈乃のことを紹介しろとせがまれていたのですぐにそれが志奈乃関連のことだということが分かる


『いや、あれは志奈乃にからかわれていただけだから。小学校の時からああいうスキンシップはよくあったよ。それに、志奈乃には好きな人がいるって言ってたし』


教室から聞こえた朔の声で志奈乃が怒っている原因が分かった気がした。


「朔のやつ本当に気づいてなかったのかよ」


小声で志奈乃に話かけると志奈乃は小さくため息を付きながらこちらを見る。


「私ってそんなわかりづらい?」


「いや、朔がアホなだけだろ。小学校の同級生は朔以外は知ってる。そもそもおまえについこないだ会った瞬にすらバレてるくらいだしな」


「だよね」


『お前俺に自慢してんのか?』


瞬が突然立がり朔の胸ぐらを掴んだのを見て、志奈乃がドアに手を掛けた。


「待てって」


「は?なんで止めるの?」


「朔なら大丈夫だ。お前も知ってるだろ」


朔は小さいころから親にしごかれていて空手は黒帯。朔から手を出すことはないだろうが、瞬程度が相手なら怪我をすることはないだろう。


それよりも志奈乃を教室に入れる方がまずい。瞬を半殺しにしかねない雰囲気を感じる。


「大丈夫だから黙って聞いてようぜ」


志奈乃は不本意そうだが静かにうなずき黙って教室を見ている。


『そもそもいきなり胸ぐらを掴んでくるような暴力男に大切な友達を紹介する奴はいないよ』



「あいつ意外と男気あるよな」

「友達っていうのは余計だけどね」


『っち。本当にうぜーな。お前にはもう頼んねーよ。替わりに今日のことは黙ってろよ。誰かに言ったらぶん殴る』


『わかったよ』


教室の中の二人の話は決着がつき、納得はしてないようだが瞬は教室を出ようとこちらに向かう。


「おい、出てきそうだ。逃げるぞ」


瞬に今まで伝わっていなかった朔への気持ちを本人にばらされた志奈乃の気持ちは想像がつかない。

好都合だったのか自分から言うつもりだったのをばらされた怒りなのか、どういう感情なのかはわからない。

だが、志奈乃が朔に暴力をふるった奴を許すわけがないということだけは容易に想像がつく。


「は?なんで?」


志奈乃の手を掴み立ち去ろうとすると、簡単に手を振り払われる。


「お、おい」


志奈乃は何の躊躇もなく立ち上がり、瞬がドアを開けた瞬間に思い切りビンタをした。


この行動力があるから志奈乃を連れて来たくなかったんだよ…


想像に難くない行動に思わず苦笑いがこぼれた。


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