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転校生2

僕がずっと気になっていたことを志奈乃はあっさりと潮に聞いた。

しかも、クラスメートが大勢いる教室で。


昼休みと言うこともありそこかしこで話し声が聞こえる。

恐らく僕たちの会話など他の人にはきこえてないだろう。

だが、志奈乃が転校してきたばかりということもあり、僕たちの会話に聞き耳を立てられているかもしれない。


「今日は中庭で弁当食べない?」

「うん、そうしよう」


「中庭あったんだ。いいね!」


僕の考えていることを察してくれた潮と能天気な志奈乃も賛成してくれたので中庭に向かうことにした。





中庭につきベンチに腰掛ける。

いつもは弁当を食べている人達がいるが、曇りということもあり、ほとんど人がいない。

数人はいるがこれだけ離れていれば僕たちの会話など聞こえない。


「さっきの話の続きだけど、なんで学校だとそんな格好なの?眼鏡も度入ってないよね。絶対バイトの時の化粧とか髪型の方が可愛いのに」


ピアスの穴があるので耳を隠しているのはわかるが、だて眼鏡をしたり目を髪で隠してわざと地味にしている理由は僕もずっと聞きたかった。


弁当を食べながら志奈乃が聞くと、潮は少し悩んで答える。


「別に理由はないよ。強いていうなら、トラブルに巻き込まれるのが面倒くさいからかな」


「あー、なるほど。なんとなくわかったかも」


志奈乃はご飯を頬張りながら納得していたが僕は何のことを言っているのかわからなかった。


「トラブル?」


「朔ちゃんは察し悪いなー。興味の無い男から告白されるのって面倒でしょ。断ったら断ったで女子から妬みとか噂とかが立つし告白されるだけ損」


この赤ぶち眼鏡と前髪をおろした状態の潮は美人ランキングの圏外になっていてあまり人気があるとは言えない。

逆にアルバイトの時の潮はSNSのIDを渡されたり、デートに誘われたりしているのを何度も見たことがある。


そういうのが鬱陶しいということだろう。


「だいたい志奈乃ちゃんが言ったとおりかな。ピアスの穴とか化粧で悪目立ちするのは面倒かなって。別に学校にお洒落をしに来ている訳でも無いから」


「余計なトラブルはごめんだもんね。朔ちゃんが空手やってるのを他の人にあんまり言わないのと同じじゃない?」


「ああ、確かにそれなら納得」


「朔くんって空手やってたんだ」


潮は驚きのあまりぽかんとしているが。自分でいうのも嫌だが、華奢で帰宅部なので無理もないだろう。


「うん、父さんが道場を経営してるからそのせいで小さい頃からやってるんだ。今はほとんどやってないけど」


「意外かも。でも空手やってるって隠すようなことなの?」


「空手をやってるって言うだけで喧嘩自慢の人に絡まれたりするから面倒そうだなって」


「それに絡まれても手は出しちゃいけないもんね」


「うん、空手を暴力に使ったら父さんに怒られるからね。だから潮も僕が空手をやってることは他の人には言わないで」


「うん、わかった」


「ありがとう。志奈乃も他の人には言わないで。小学生の時も言ったよね?」


僕がジト目で見ると志奈乃は両手を軽く合わせて苦笑いをする。


「ごめんごめん。潮ちゃんにならいいかなって」


「まあ、潮にならいいけど」


「私ならいいんだ……でも、朔くんから直接聞きたかったかな」


「いや、自分から強いアピールみたいなことをするのって格好悪いというか……」


一応黒帯だが、喧嘩をしたことは無いのでおそらくそれほど強くはない。

体型もやせ形でムキムキとは程遠い。


そんな僕が空手をやっていると言ったところで格好はつかないだろう。


「あ、そういう理由なんだ。ならいいや」


「あ……別に潮を信用してなかった訳じゃないからね。高校で知ってるのなんて小学校から一緒の人くらいしかいないし、わざわざ言いたいことじゃなかったから」


「うん、わかってるよ」


「二人とも本当に付き合ってないんだよね?」


笑顔が戻った潮と僕を見て志奈乃は呆れながら溜め息をついた。



三人ともご飯を食べ終わりボーッとしていると、志奈乃がおもむろに喋りだした。


「まだ休み時間あるし、学校のこと教えてよ」


「学校のこと?」


「うん、 行事とか?」


「うーん、今月末に文化祭があるけど多分他の学校とあんまり変わらないよ」


「文化祭いいじゃん!楽しそう。何やるかもう決まってるの?」


「クラスの出し物は喫茶店。クラス対抗の種目は夏休み前にダンスって決まってて、曲も決まってるよ。まだ練習とかはしてないけど夏休み期間で曲と踊りは軽く覚えとけって言われた」


スマートフォンで曲名を調べてダンス動画を志奈乃に見せる。


「あ、これなら大丈夫。両方踊れるから」


「え、なんで踊れるの?」


「ああ、ちょっと前に流行ってたから動…」


「どう?」


慌てて口元を押さえて志奈乃はあたふたとしている。


「どうにかして覚えたの!ほらこんな感じでしょ?」


何かを誤魔化すように急に立ち上がり、動画も見ないで口ずさみながら踊っている。覚えているというのは本当なのだろう。


志奈乃は昔から体操をやっていて運動神経が良い。あの時は運動神経の良さも相まって男にしか見えなかったが今は違う。


キレの良いダンス、表情の見せ方、どれをとっても魅力的に見えてしまう。


「志奈乃ちゃん凄いね。アイドルみたい」


「でしょー」


僕と潮が感心していると、志奈乃は気分が良さそうに踊り続けていた。


お読み頂きありがとうございます!


次話から文化祭編に入ります!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 女装は…… [一言] 黒帯でケンカしたらお父さんに怒られるだけでは済まないよね。 志奈野はどうが投稿者かな? 潮は、なぜ納得するのか? 危機感が足りない。 今週も有難うございます…
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