表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/30

対決

しばらくの間、姉さんと話している志奈乃を厨房から見ていたが、好き勝手に昔の僕の恥ずかしい話や思い出を話していた。


この話を聞けばいくらなんでも月見朔が姉さんの弟だと言うことがわかる。


志奈乃が来ることを全く知らなかったので完全に結果論だが、遊園地の日に潮に打ち明けておいて本当によかった。こんなバレ方をしていたら、僕と潮の友だち関係は間違いなく終わっていた。


「ちょっと志奈乃と話してくる」


これ以上潮に僕の小さい頃の話を聞かせるわけにはいかない。


「うん、私はここで見てるね」


「う、うん」


潮は軽く手を振って笑っているだけにもかかわらず、とてつもなく威圧感がある。


「志奈乃、久しぶり」


「うん、久しぶりだね朔ちゃん」


「なんでこの店にきたの?まさか偶然?」


「そんなわけないじゃん。朔ちゃん家に行ったけど誰もいなかったから、朔乃姉の店に来てみたの。雑誌で見て場所は知っていたし」


「そしたら朔ちゃんもいてビックリしたけど」


「だから僕のこともすぐにわかったんだ」


やはり姉さんに会いに来たのか。僕がいたのは偶然だったのだろう。姉さんの店だと知っているなら僕だと気づくのもわかる気がする。


「いや、そのまんますぎて朔乃姉の店じゃなくてもわかるよ。まあ、男友達なら誤魔化せるかも知れないけどね。女の子はそういうところは良く見てるから絶対気づくよ。朔に女の子の友だちなんて光しかいないだろうけど」


相変わらず僕をからかう時の志奈乃は楽しそうだ。髪を染めて化粧もしていることもあり、雰囲気は別人だが笑った時にチラッと見える八重歯は昔と全く変わらない。


「女友達くらい光以外にもいるよ」


「へぇ、何人?」


「一人…」


「少なっ」


「ほっといて。それよりも他のお客様とか他のアルバイトの人が来たらこんな話できないからちょっと裏で待っててよ。もうすぐ仕事も終わるし」


「えー、まあいいや。新しく住むことになったマンションは朔ちゃん家の近くだし一緒に帰ろ。ついでうちに来なよ」


女の子の家に行くのは緊張するが、小学生の時に何度も遊びに行ったことのある志奈乃の場合は話が別だ。


「わかった」


「じゃあ外で適当に時間潰してるからバイトが終わったら連絡ちょうだい」


それだけ言って志奈乃はすぐに会計して店からでていった。


「朔夜ちゃん?」


「はい……」


「今日は私と遊ぶんじゃなかった?」


今日は同じ時間にシフトが終わるので潮と約束をしていた。志奈乃が突然きたことに焦ってしまって完全に忘れていた。


「ご、ごめん。今すぐ断ってくる」


「いやいいよ。私も志奈乃ちゃんと話してみたいし」


それは三人で話すということなのだろうか。そんな状況僕の心臓がもたない。


「先に潮と約束してたから断るよ。潮と遊んだ後に志奈乃の家に行けばいいだけだから」


家が近いと言っていたし、待たせている志奈乃には申し訳ないがそれでいいはずだ。


「家?」


「うん、さっき聞いたけど僕の家とかなり近いみたいだから」


「近さとかどうでも良いよね。志奈乃ちゃんの家で二人きりになるってこと?」


「そうだけど、志奈乃の家は小学生の時にたまにいったし別に二人きりでも何もないよ」


「やっぱり三人でどっかで話そうよ。そうすればマンションに行く必要もないでしょ?」


「え?でも潮のその格好がバレるのはまずいよね。それにバイトしていることもなるべくバレたくないでしょ?」


「そんなの大した問題じゃないよ。オサナナジミトフタリデイエナンテアリエナイシ」


「えっ?ごめん最後のほう聞こえなかったんだけど」


「別に何でもないよ?とにかく私も志奈乃ちゃんと会うからね?」


「わ、わかった」



あまり他の人には聴かれたくないのと、少しでも落ち着けるところで話をしたかったということもあり、誠也兄の車の中で話すことになった。


駐車場の場所を伝え潮と二人で車の中で待っていると突然車のドアが開かれた。


「朔ちゃん、バイトお疲れ様ー。あれ?その人は?」


「初めまして。堀川学園の2年で、潮沙羅です。朔乃さんの店でアルバイトしてます」


「そういえばさっき厨房のほうにいたね。大学生かと思ったけど同級生だったんだ」


「志奈乃、車の中に入ってから話そうよ」


「それもそうだね。ちょっと詰めて」


志奈乃は当然のように僕たちが座っている後部座席の方に座ろうとしてくる。


「運転席か助手席に乗りなよ」


「別にいいじゃん、こっちのほうが話しやすいでしょ」


結局、三人とも後部座席に乗ったせいで間に挟まれている僕は逃げることすらできなくなってしまった。


「朔ちゃんがさっき言ってた女の子って潮ちゃんのこと?」


「うん。友達って言われるのはちょっと傷つくけどね」


真ん中に僕が座っているのにまるでいないかのように潮と志奈乃は話始めた。


そして友達ではない宣言を潮にされてしまった。 やはり潮のことを怒らせてしまったのだろうか。志奈乃も驚いた様子で心配そうな表情を浮かべる。


「仲悪いの?」


「うーん、その逆かな?」


仲が悪いの逆とはどういうことなのだろう。潮の言いたいことが全くわからない。


「へぇ?まさか付き合ってたりする?」


「学校では秘密にしてるから志奈乃ちゃんの想像に任せるよ?」


以前に、朔夜の状態で潮から聞いた、付き合っていると相手に誤解させるというのはこういうことだったのか。


「そうなんだ、沙羅ちゃんは朔ちゃんのことが好きなんだね」


「うん」


「付き合っているかは怪しいけど好きなのは本当っぽいね。でも朔ちゃんがいるところで話したのはミスかなー」


潮と話していた志奈乃は突然僕のことをじっと見つめた。


「朔ちゃん、沙羅ちゃんのこと好き?」


「そんなの志奈乃に言う必要ないよ」


「ふーん、朔ちゃんって顔に出やすいんだよね。友達って言われるのは傷つくって潮ちゃんが言った時に露骨に凹んでたし」


志奈乃が潮しか見ていないと思って油断してしまった。


「何言ってるの?そんなわけ」


「目線を右上にしたのも焦ってる証拠だよね。朔ちゃんがうちに嘘つくなんて無理だよ。この感じだと仲は良いけど付き合ってないくらいの感じでしょ?」


志奈乃は何もかも見透かしたような笑顔で僕の頭を撫でる。


「まあ、付き合ってなくてよかった」


「良かった?志奈乃には関係無いでしょ?」


「流石のうちでも付き合ってたら遠慮するからね。朔ちゃんこれからうちに来て荷ほどき手伝ってよ」


「志奈乃ちゃん、待って。まさかとは思うけど独り暮らしじゃないよね?」


「独り暮らしだよー」


「ああ、それなら荷ほどき結構大変だね」


「朔くん待って。そういう問題じゃない。独り暮らしの女の子の部屋に彼氏でもない男の子が入るのは非常識だよ」


「それもそうかも」


「うちがいいって言ってるんだから気にしなくて良いよ。それに女の子の家に入るチャンスだよ?」


「志奈乃と光の家に入ったことあるし、チャンスとかどうでも良い」


「へーじゃあ沙羅ちゃんの部屋には入ったことないんだね」


「まだないね。朔君今度遊びに来てね」


「う、うん」


何故かはわからないが潮の目が恐い。

家に誘われることがこれ程恐いことだとは知らなかった。


これ以上この話をしていると僕の胃が痛くなる。無理やりだが別の話にすり替えるしかない。


「そういえば志奈乃。岳にあんまりちょっかいださないようにね。今は光と付き合っているから」


「へーそうなんだ。あの二人やっとくっついたんだね。岳には興味ないしどうでもいいけど」


「まあ、そうだろうと思った。志奈乃は彼氏いるの?」


僕と潮に遠慮なく聞いて来たのだから志奈乃のことも聞かないとわりに合わない。


「なんで?」


「いや、別になんとなく聞いただけ。彼氏がいたら志奈乃の家には行けないと思って」


「なーんだ、口説いてるのかと思った。いないよ、好きな人はいるけど」


「僕が志奈乃を口説くわけないでしょ」


「は?なんで?」


先程の聞いた「なんで?」よりも数倍ドスの効いた声と共に頭を鷲掴みにされた。

お読み頂きありがとうございます!

1日遅れてしまってすみません。


来週は月曜日に投稿できるように頑張ります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 修羅場ならピアスごりごり治安悪い系で行けばいいのに。と思ってしまいました。 ライバルっぽい相手に、初対面でいきなり名前呼びとかムカつくよね。 更新お待ちしてました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ