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再会

遊園地に行った後はとくに変わった出来事もなく、僕の夏休みはひたすらアルバイトと宿題に忙殺されていた。

今日も2時間後にアルバイトが入っている。


アルバイトの前に家でゆっくりしていると、光からメッセージがきた。


『しなが2学期から帰ってくるって』


しなって誰だ?

いや、光がしなと呼んでいた人物を一人だけ知っている。


河野(こうの) 志奈乃(しなの)

僕たちと同じ小学校で中学1年生まで一緒だったが親の転勤で遠くに引っ越した女の子だ。


志奈乃とは光と岳も含めた4人でよく僕の家で遊んでいた。

小学生の時から運動神経抜群でテストもオール100点の光を特別視しない志奈乃だったからこそ女友達の少ない光とも自然と話していた。


だが僕はどちらかと言うと志奈乃のことは苦手だ。

いじめられていたわけではないが、僕の女の子っぽい顔を散々馬鹿にされた。僕とは逆で志奈乃は身長も高く髪も短かったので、よく男に間違えられていたのでもしかしたら僕の顔が羨ましかったのかもしれない。

違うかもしれないが少なくとも僕は志奈乃の顔立ちや男勝りの性格が羨ましかった。

他人の芝生は青く見えるというやつだろう。


『帰ってくるって2学期から転校してくるってこと?』


『そう』


『まあ、同じクラスになるかどうかもわからないしそんなに関係ないよ。そもそも志奈乃も憶えているかどうかわからないし』


僕の家に来たときに当時大学生だった姉さんには懐いていたので僕のことは忘れていても姉さんのことは憶えていそうだけど。


『憶えてないわけ無いと思うけどね』


『とりあえず沙羅には幼馴染が帰ってくるって言っておきなよ。絶対面倒なことになるから』


幼馴染って言っても小学校が一緒だったくらいだと思うがなぜ潮に言う必要があるのだろうか。

だが、光が言うなら何か意味があるのだろう。


『これからバイトだから一応言うよ』


『うん、そのほうがいいよ』



いつものように誠也兄の車で着替えてから店に入ると既に潮がいた。


「おはよう、潮」


「おはよう朔夜ちゃん」


結局潮の希望もあり、潮にばれてからもアルバイトを続けている。


変わったことがあるとすれば、アルバイト終わりによく遊ぶようになったことと、アルバイトの時も潮ちゃんではなく潮と呼ぶようになったということだ。

学校で潮ちゃんと言ってしまわないように僕から頼んで呼び方を変えた。


遊園地の一件以降、潮は僕のことを朔くんと呼んでいるがアルバイトの時は変わらず朔夜ちゃんと呼ぶ。最初からネームプレートに朔夜と書いているので今さら変えられないのも仕方がない。

まあ、潮は僕と違ってうっかり学校で朔夜ちゃんとは言わないだろう。



店が暇な時間になり恒例の潮との雑談タイムが始まった。

光に言えと言われたので、一応話しておこう。


「新学期から転校生がくるんだって」


「そうなんだ」


やはり潮はそこまで興味がないのだろう。


「何で転校してくるって知ってるの?」


「光から聞いたから。小学校の時の友達なんだ」


「そっか。光ちゃんから聞いたってことは女の子?」


「うん、一応そうだよ」


「どんな女の子?仲は良かったの?」


急に食いぎみに聞かれてしまった。

光の友達だから興味があるのだろうか。


「今はどうか知らないけど、顔とか身長のせいでよく男に間違えられていたかな。僕とはよく遊んでいたけどそこまで仲は良くなかったかな」


「よく遊んでいたのに仲は良くないっってどういうこと?」


潮の目が恐い。


「志奈乃は僕よりも、光と僕の姉さんと仲が良かったから。4人で僕の家に集まっても岳と僕は二人でゲームしてたから」


「そっか。でも下の名前て呼んでるんだね。しかも呼び捨てで」


「小学校の時の友達はみんなそうだよ。光も岳もそうだし」


「ふーん」


カランカラン


ドアについている鐘がなりお客様が来たことを告げた。


「僕が行くよ」


この気まずい雰囲気から逃げることができるまるで恵みの雨のようなお客様だ。



「いらっしゃいませ。何名様ですか?」


「1人です」


グレーアッシュのセミロングで整った顔立ち。大学生くらいだろうか。


「カウンターとテーブルどちらがよろしいですか?」


「カウンターで」


カウンターに座ると目の前のお客様はじろじろと僕の顔やネームプレートを見ていた。


「店員さん、さくやちゃんって言うんですね。朔ちゃんって呼んでもいい?」


「え?いえ、どうぞ」


おそらく初めてきたお客様なのに妙に馴れ馴れしい。

しかも僕のことを朔ちゃんと呼ぶのはつい先程話していた志奈乃だけだったのでついつい焦ってしまった。

だが偶然だろう。

明らかに志奈乃とは見た目が違う。

いくら数年会っていなかったとはいえ別人すぎる。


「うん、ありがとう。じゃあ朔ちゃんって呼ぶね。それよりも今日って朔乃さんはいますか?」


「はい、いますよ」


姉さんは休憩中で裏にいるが呼べばすぐにくる。


「昔お世話になったので挨拶したいんだけど」


「呼びにいってきますね」


事務室に行き姉さんを呼びに行く。


「姉さん、お客さんが姉さんに会いたいって」


「どんな人?」


「大学生くらいの可愛い人。髪はグレーで身長は165くらい」


「そんな知り合いいたかしら。まあ、会えば分かるだろうし行ってくるわ」


お客様を待たせないように姉さんは早足でホールに向かった。


「はい、お待たせ致しました…あれ、志奈乃ちゃん?」


「うん、久しぶり朔乃姉」


今姉さんが志奈乃と言った気がした。

そしてお客様は朔乃姉と言った。


もう僕の思っている志奈乃で間違いないだろう。だがイメージが全然違う。


「朔夜ちゃん、もしかしてさっき言ってた人?」


厨房でこっそりと聞いていた僕の後ろから潮の冷たい声が聞こえた。


「うん、そうみたい。僕の知ってる志奈乃とは全然見た目が違うんだけど」


「へぇ、そうなんだ」


何故かはわからないがこの場から一刻も早く立ち去らなければ命の保障がない気がした。


「朔乃姉はすぐに気づいてくれたのになんで朔ちゃんは気づかないのかな?私は朔ちゃんのこと一瞬でわかったのに」


他の客がいないことをいいことに厨房から聞き耳をたてている僕に聞こえるくらいの声で志奈乃が姉さんに話し出した。

お読み頂きありがとうございます!

この話から新章突入です!


この話が面白かった続きが気になると思っていただけたらブックマークや感想を書いてくれると嬉しいです!

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― 新着の感想 ―
[良い点] ちゃんと付き合ってないのに彼女面する、ピアスごりごり女子。 [気になる点] お店以外の女装が少ない。 [一言] 新章、お待ちしてました。
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