『クリスマス企画的なやつ:呪』
グロテスク注意です。
過度のヤンデレ表現があります。
あとBL表現もあります。
正直クリスマスに投稿する内容じゃないと思います。
十二月二十五日。
クリスマスだ。
現在時刻は午後九時。
俺達は意図的に電気を消した部屋の中、ベッドの中でイチャイチャしていた。
俺の膝の上に座る小柄な体躯を片手で抱きしめながら、サラサラとした手触りの良い黒髪を撫でる。ふんわりとシャンプーの匂いが漂ってくる。
「アカツキさん……」
膝の上で甘える様に声を出してくるので、抱きしめる力を強くし、よしよしと口に出しながら頭を撫でてやる。小さく吐息を漏らし、身体を完全に俺に預けてくる。
「可愛いよ」
俺は囁くように耳元でそう言う。
これはIFの物語。
もしも、こんな世界が、展開が、人生が合ったらという、たったそれだけのくだらないお話だ。
「リュウ」
〈リュウの場合〉
俺とリュウが付き合い始めたのはブレオンから帰ってきてから一年ほどが経過した頃だった。
リュウが一人で俺の家へ訪ねてきて、進路や対人関係などの人生相談をしてきたのがきっかけだった。
最初はこんな関係になるなんて二人共思っていなかった。リュウが相談し、俺はそれに答える。それだけの関係だった筈だ。それがいつからかお互いを求めるような関係になっていた。
未だ一線を越えるような真似はしていない。ただお互い抱きしめ合ったり、話したりするだけで満たされるのだ。
リュウと付き合うようになってから、リンや栞、七海達とは疎遠になっていった。でも俺はそれでもいい。リュウさえいれば、俺は良い。
「ん……アカツキ、さん」
リュウの首筋に唇を這わせる。男とは思えないほど白く綺麗な肌。吸い付くようにしっとりとした首筋に軽く吸い付くと、リュウは小さく吐息を漏らす。暗い部屋の中でお互いの姿は見えないが、それでもリュウを感じる事が出来る。温かい。
この程度のスキンシップは今まででも何回か合った。しかし今日のリュウは緊張したように身体を固くしている。恐らく、察しているのだろう。今日、俺達は一線を越えてしまうという事を。
ちょっとした悪戯心が芽生え、俺はリュウの首筋をぺろりと舐めた。
「ぃひゅあひゃ」
少ししょっぱい。
リュウが女の子の様な悲鳴を上げて身を捩る。思わず笑ってしまった。
「むぅ」
リュウは頬を膨らませ、目尻に涙を浮かべて拗ねたような視線を向けてくる。その表情に嗜虐心を刺激され、俺は更にリュウの首筋を舐める。
リュウはビクンと身体を震わせて、抵抗しようと身体を動かす。俺は両手でリュウの身体を押さえて逃さない。
舌を動かす度にリュウが悲鳴を上げる。次第に抵抗する力を失っていき、喘ぎ声を漏らすだけになった。
「っ……っ」
リュウは自分の口を押さえて、必死に声を押し殺している。俺はリュウの声がもっと聞きたくなって、口を塞いでいる手を剥がそうと――――――。
「なにしてるの」
背後から急に声が聞こえた。
全身の毛穴が開き、汗が一斉に吹き出す。身体が硬直する。
それはリュウも一緒の様で、俺の腕の中で身体を凍らせている。
振り返ると、リンが立っていた。
「何、してるのかな」
平坦な声だ。
いつもと変わらない平坦な声。それ故にどうしようもなく薄っぺらくて、どうしようもなく不気味だった。口元に笑みを浮かべているが、その目は笑っていない。一切の光を失った双眸が俺達を射抜く。
リュウから腕を離し、俺はゆっくりと立ち上がる。足が震えて思うように立ち上がれずに蹌踉めく。
その様子をリンは一切表情を変えずに見ている。それがどうしようもなく怖かった。
「い、いや、ほら、違うんだ。リュウとちょっと遊んでただけでさ」
「クリスマスに、私の誘いを断って、こんな暗い部屋の中で?」
「い、いや、あとでリンも呼ぶつもりで、さ」
苦しい言い訳。舌が思うように動かない。頭が真っ白になって上手な言葉が出てこない。身体が震える。指先が小さく痙攣している。口の中が緊張で粘つく。唾液を飲み込むとまるで喉に絡みつくよう。
「うふ」
「リ、リン?」
「うふふふふふうふふうふふふふ。おもしろことをいうね、アカツキ君。もうこんな時間だよ? 私、もう夕飯食べちゃったかな。うふふ」
リンの様子がおかしい。狂った様に笑っている。俺はかつてこの笑みに近い物を何度か目にしている。カタナとか、手斧とか、戦人針とか。種類は違っても、それらに近い笑み。
本能が警鐘を鳴らしている。
何かがやばいと。
足元のリュウは恐怖からか固まってしまっている。小刻みに震えている。
「ダメだよアカツキさん、ずっと一緒にいてくれるっていったのに何でリュウと一緒にいるの私を捨てるの?」
「リ、リン、ちが」
「駄目だよ」
リンが一歩踏み出した。
その時になってようやく俺は気付く。
リンは両手を後ろに回している。何故だ? 何かを持っている? 持っているとしたらそれは何だ?
そこまで考えた時に、腹部にズンと重い衝撃が走った。
「ぁ?」
俺の腹に包丁が刺さっていた。
なんで? 何が? な、なぜ、そんな、、、、、、
「そんなアカツキさんはいらない」
ズプリと刃が腹から抜かれる。刃は俺の血で赤黒く濡れている。ヌルヌルとテカテカと、腹から血が噴出する血が赤い真っ赤な血が
腹が熱い熱い熱い冷たい冷たい身体が冷たい立っていられない視界が揺れるリュウの悲鳴がきこえ
苦しい苦しい寒い寒い目が暗い電気付けてなかったんだ付けないと電気、電気、
「そんなアカツキさんはいらないよぉぉお。あはははははははははははははあはははっはあはははっははははあははははははっはははははははははははははははははははははっはははははははははははははは」
さむい。
〈けだまくの場合〉
聖夜。
黄色やピンクなどのカラフルな電灯が照らすカラオケの部屋の中、俺はある男と一緒にかなり古い歌を熱唱していた。相手はかなり声が渋い。
「やっぱ歌はいいなァ」
歌い終わって一息。ソファーにもたれ掛かりながら男――――けだまくはそう言った。
薄っすらと生やした顎鬚、無駄がない引き締まった肉体、射殺す様な目付き、濡れたようにうねった黒髪。
冬だというのに着ているのはジーパンと白いシャツ一丁だ。シャツから浮き出ている胸筋と腹筋が逞しい。
前に裸を見させてもらったことがあるが、全身の筋肉が凄まじい。鍛えあげられた三角筋や上腕二頭筋、上腕三頭筋や前腕筋からはしなやかさと同時に雄々しさが感じられる。僧帽筋や広背筋、脊柱起立筋は力を入れるとまるで鬼の様な模様が浮き上がるほどに鍛え上げられている。鍛えられているのは上半身だけではない。大殿筋は極限にまで引き締められ芸術性を感じられる。大腿二頭筋の形も素晴らしい。
けだまく曰く、この筋肉は筋肉トレーニングで得たものではなく、『仕事』の過程で身に付けた物らしかった。
けだまくの筋力は凄まじい。握力だけで人の頭が握りつぶせるのではないかというぐらいの力がある。
「にしても、おめェとこんな関係になるなんて思ってなかったぜ」
マイクを机に置くと、けだまくは舌舐めずりしながら俺に手を伸ばしてきた。ガッチリと腕を掴まれ、抵抗出来ないようにされる。
現実に帰ってきた俺はとある仕事の最中にけだまくと再開した。そこから何回かけだまくに殺されかけたりしたが、何だかんだで今の関係に落ち着いている。
「け、けだまく。カラオケルームだし監視カメラとか、」
「くひひ、ここは監視カメラなんてねェよ。取引とかにはうってつけの場所だ。後、俺の事はけだまくって呼ぶんじゃねえ。ククリだって言ってんだろ」
「く、ククリ」
名前を呼ぶとけだまく、いやククリは満足そうな笑みを浮かべる。それから俺の腕を掴んだまま、顔を近付けてくる。
「あの世界で殺し合った時は生意気なクソガキだと思ったがよォ、こうやって征服しちまうと可愛いもんだぜ、オイ」
嗜虐心を隠そうともしないけだまく。
ククリはいつもこうして俺を押さえつけて、一方的に俺を弄ぶ。どSなのだ。俺はMという訳ではないが、ククリの前ではそうならざるを得ない。
俺の両腕を片手で押さえつけると、ククリはもう片方の手で俺のブレードに手を伸ばしてくる。俺のはブレードだが、ククリのは魔剣だ。ブレードでは太刀打ち出来ない、たった一本で全てを蹂躙する魔剣使い。それがククリなのだ。
そしてやがてブレードと魔剣があれそれして、俺達のブレードオンラインが始まる。
〈手斧の場合〉
「大好きって百回言って下さいアカツキさん」
「……大好き大好き大好き大好き大好き大好大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き、大しゅき……」
「あー噛みましたね。罰として私の頭を撫でて下さい」
クリスマスの日、俺は家の中、手斧と二人きりでクリスマスパーティを開いていた。パーティと言っても二人でチーズフォンデュを食べたり、ケーキを食べたりして、後はいつも通りにイチャイチャするだけなのだが。
罰ゲームで、俺は手斧の頭を撫でる。
黒髪のおかっぱ頭、小学生くらいにしか見えない体躯、雪のように白い肌。手斧の容姿はかなり整っていて、ともすれば人形と間違えてしまいそうだ。
そんな手斧の年齢は以外なことに(というか驚くべき事に)二十を越えている。俺よりも歳上なのだ。
それを聞いた時は心臓が止まるかと思った。
カタナは手斧の兄(姉?)らしく、何歳か年上の様だ。
「んーそんな撫で方じゃあ満足出来ませんね」
手斧はそう言うと俺の腕を掴み、そして自分の首元に持ってきた。
俺を見る手斧の目は蕩けきっている。ピンク色の小さな唇で俺に次の罰を命じる。
「私の首を絞めて下さい」
ギリギリと音を立てるぐらいに、俺は手斧の首を締める。指が真っ白な首に食い込み、真っ赤にしていく。
手斧は苦しさを感じさせない、むしろ恍惚とした表情で首を締められている。真っ赤になった手斧の顔が徐々に青白く染まっていく。白くなり始めている唇の端から唾液が零れ落ちる。
「っ……はぁはぁはぁ」
「ごほっ……ぅ、ごほごほ」
俺が指を離すと、手斧は勢い良く咳き込んだ。大丈夫かと声を掛けようとすると手を上げて制してくる。しばらくの間、部屋の中は俺と手斧の荒い息だけしか聞こえなくなる。
「最高ですよぉ、アカツキさん」
回復した手斧がうっとりとした表情でそう言う。その表情はとても蠱惑的だった。
手斧の性癖は変わっている。
苦痛を受けるのが好きらしいのだ。
首を絞められたり、ナイフで傷付けられたり、殴られたり、そういった苦痛を、手斧は愛している。
「こんなんだから、仕事仲間の人達からは《アルゴフィリア》なんて呼ばれちゃってます」
「苦痛愛好…………」
正直言って、手斧は異常だ。苦痛愛好もそうだし、彼女がやっている仕事も常軌を逸している。性格も認識能力も、何もかもがおかしい。
手斧は狂っている。
だけど俺はこんな彼女が好きなのだ。
恋をしてしまった。
だから、俺はリンを振った。もう俺がリンと連絡を取ることは無いだろう。そうじゃないと、手斧はリンを殺してしまうかもしれない。
リンと二度と会えないことに寂しさを感じるがおれ――――
グシュ。
何かが刺さる音。
何?
音の鳴った方へ視線を向けると、俺の太腿にナイフが刺さっていた。知覚した瞬間、痛みというよりは熱さが太腿を襲う。
「う、ぎぃ」
「アカツキさん私といるときに他の女性の事を考えないでくださいって前にも言ったじゃないですかぁ」
どこから取り出したのか、手斧が俺の太腿に刺さったままのナイフをグリグリと動かす。
傷口の部分が燃えるように熱い。肉の中に異物が入り込んでいる不快感。熱いのに肉の一部から底冷えするような冷たさが伝わってくる。ナイフの刃の感触。
「アカツキさんアカツキさんアカツキさんアカツキさんアカツキさんアカツキさん」
「わ、分かった。悪かった、手斧。俺がわる、かった。許してくれ、俺はお前がい、一番だから」
ニチュリと音を立ててナイフが太腿から抜き出される。刃には黒みを帯びた血液と肉の破片がベッタリと付着している。
「本当?」
「あ、ああ。本当だ」
「ん、分かりました! もぅ、気を付けて下さい」
「あ、ああ」
「大丈夫ですか、傷」
「大丈夫、だ」
俺の返答に手斧はにっこりと微笑むと、ナイフを口元に近付ける。唇から真っ赤な舌を覗かせて、刃に付着している俺の血液と肉片を舐めとる。ナイフが綺麗になるまで舌を這わせると、手斧は口をゆっくりと動かして、それを嚥下した。
「知り合いに《カニバリズム》って呼ばれてる人がいますけど、ちょっとその人の気持が分かります。んっ、アカツキ君美味しい」
「そ、そうか」
正直に言って、俺は手斧に恐怖を覚える事がある。
ナイフを平気で突き立てる異常性、蟻を踏みつぶす幼い子供の様な無邪気さ。
いつか俺は手斧に殺されるんじゃないか、そんな予感があった。
だけど。
だけどそれでもいいんだ。
俺は手斧を愛している。
だから俺が殺される事になっても、構わない。
俺はとっても幸せだ。
「アカツキさんアカツキさんアカツキさんアカツキさん。好きです大好きです愛しています。私は貴方と出会うために生まれてきたのだと貴方と話しているとそう確信させられます。貴方がいなければ私はこんなに楽しい毎日を送る事は出来なかったと思います。
え? 今日はいやに饒舌だなって?
えへへ、アカツキさんと一緒にいるとテンション上がっちゃいます。それに今日はクリスマスですからね。
もしかしてアカツキさん、こんなにテンションの高い私は嫌いですか? 鬱陶しいとか、ウザいとか思ってますか?
ごめんなさいごめなさいごめんなさいごめなんなさいごめんなさい嫌わないで嫌わないで嫌わないで嫌わないで。
嫌いじゃない……ですか? 本当ですか? 本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当ですか? 絶対ですか? 絶対の絶対ですか?
良かったぁ。
私、アカツキさんに嫌われたら生きていけません。
冗談とかじゃなくて、アカツキさんに嫌われたら私は自ら命を絶ちます。本当にですよ。嘘とかじゃなくて、本当に。
だからアカツキさん、私の事を嫌いにならないでくださいね――――私を殺さないでくださいね。
あはは、信じてますよ、アカツキさん」
自分で書いておいて何だけど、これはひどい。
次回作に登場する人物とか、けだまくとか手斧並に狂ってます。




