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《Blade Online》  作者: 夜之兎/羽咲うさぎ
―World End―
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短いです。

活動報告でリュウとリンのラフを公開しているので、興味があったら見てください。

 第二十八エリアのボス攻略会議が開かれたのはいつも通り、《不滅龍》のギルドホームである龍帝宮だった。第二十五攻略エリアに引越した龍帝宮は以前よりも大きくなっており、会議室も広くなっている。複数のギルドが行ったプレイヤー育成によって攻略組のプレイヤーの数は格段に増えているため以前の大きさのままでは全員が入りきらなかっただろう。 

 とはいえ、エリアの攻略が進む度に犠牲となるプレイヤーも徐々に多くなってきている。前回のボスは段違いに強かった。かなりの数の犠牲者が出ている。

 その為か、今回のボス会議はいつも以上に空気が重く、プレイヤー達の表情も硬い。

 ブレードオンラインは全三十のエリアが存在している。このボスを倒せば残るエリアは一つとなる。掲示板では全てのエリアが攻略されたら何が起こるのか、という話が飛び交っている。


「よし、攻略に参加するプレイヤーは全員集まったな!」


 そんな重い空気を破るようにして、玖龍が声を上げ皆の注目を集める。彼の姿を見たプレイヤー達の空気が僅かに軽くなった。これまで幾度にも及ぶボス攻略会議をまとめてきたリーダーだ。彼に対する皆の信頼は厚い。


「それではボス会議を開始する」


――――――――――――


 

 第二十八エリア《サタンゲート》。

 巨大な黒き門をくぐった先にある悪魔の世界。

 出てくるモンスターはどれも高レベルかつ狡猾でボスを発見するまでに多くのプレイヤーが犠牲となった。万全の体勢を整えた《不滅龍》と《照らす光》の連合軍によって、ボス部屋は発見されたのだが、そこまでたどり着くまでに十数人が命を落としたそうだ。

 徐々に強くなっていくモンスター、犠牲になっていく仲間達、クリアした後の不安、それらが溜まったプレイヤー達は疲弊してきている。攻略組をやめて街に引き篭ってしまったプレイヤーも多くいる。それを防ぐために、第二十九エリアは攻略組の全ギルド、全プレイヤーで連合を作って攻略しようという提案が出ている。《不滅龍》や《照らす光》、《烈火》や《瑠璃色の剣》などのギルドがその案を支持し、今回の攻略が終わればすぐに連合が作られる予定になっている。


 ここまで辿り着くまでに色々な事があった。

 大型PKギルド《ニードレス》と攻略組との死闘は多くの犠牲者を出したし、大型クエスト[怨龍の襲来]では多くの攻略組が協力し合った。

 栞と兄妹としてどうかと思うような出来事が起きたり、七海の過去を知ったり、どれも機会があったら話したいと思う。


「おに、アカツキ君っ」


 大きな変化としては、リンが俺の事を「お兄ちゃん」から「アカツキ君」と呼び名を変更してきた事だろうか。俺としてはお兄ちゃんと呼ばれるのはなかなか悪くなかったのだが、妹的な存在よりも彼女的な存在になりたい、という事で変更したらしい。

 既に俺とリンは恋人同士……だと思う。

 だけど俺は未だにリンにそういった言葉を一言も言っていない。チキンな性格のせいだ。

 だけど、そろそろけじめを付けなければならない。

 


「明日、大丈夫?」


 ベッドの上、腕枕の上に乗っているリンが俺の胸に顔を押し付けながら不安そうな声を漏らす。俺は大丈夫だよ、と笑いながら頭を撫でる。


「お、アカツキ君のなでなで好きー。えへへ」

「お兄ちゃんでもいいんだけどなあ」

「だーめ。アカツキ君はお兄ちゃんだけどお兄ちゃんじゃないのー」


 よく分からない事を言いながら、俺の背中に手を回してくる。ぎゅー、と口に出しながら抱きしめてくるのを、苦笑しながら抱きしめ返す。今では毎晩俺とリンは一緒に寝ている。今までは時々部屋に来る感じだったが、もう同じ部屋で生活している。リンの甘えっぷりもエスカレートしてきて、眠くなると「ちゅうしてー」とキスをねだってくる様になった。めちゃくちゃ可愛い。


「アカツキ君、好き。大好き」


 ぎゅうううううう。

 抱きしめる手に力を込めてきた。

 リンのその言葉に、俺は「ありがとう」と返す。


 俺はまだ、リンに対して愛の言葉を返せないでいた。これだけイチャイチャしているのだから、もう俺達は付き合っていると考えていいのだろう。今までは兄妹の様な関係だから、と思っていたが、リンの口から「妹じゃやだ」と聞いている。それはつまり、そういう事だろう。

 

 だから、俺は。

 

 このボス攻略会議が終わったら、リンに告白するんだ。



――――――――――――

 

 頭から生えた二本の捻れた角から紫色の閃光が放たれた。ギュインと異質な音がボス部屋の中を横切る。《ステップ》で回避していくプレイヤー達。逃げ遅れた者が閃光に飲まれ、消滅していく。

 『大魔王』サタン。

 《サタンゲート》のボス。

 サタンと戦うにはまず、ベルゼブブ、サマエル、サタナエルの三体を最初に倒さなければならなかった。一体一体が通常のボスと同程度に強く、戦闘が開始してから三時間掛け、ようやくサタンの前に立つことが出来た。既に何人ものプレイヤーが死んでいる。

 前座である三体よりもサタンが弱い訳が無く、ハッキリ言ってその戦闘力は絶望的だった。

 通常攻撃が強力なのは当然の事、防御不可能の即死レーザー、周囲を吹き飛ばす闇の波動、バッドステータスを引き起こす魔王の吐息、死角から跳んでくる鋭い尾。更に一定時間ごとにHPが回復していくと分かった時には泣きそうになった。

 捻れた二本の角、漆黒の髪、赤い双眸、強靭な肉体、鋭く尖った黒い尾。大魔王の名にふさわしい外見と実力を持ったそのボスに、それでも俺達は必死に挑んだ。死への恐怖で潰れたプレイヤーから、サタンの攻撃によって命を落としていった。

 

「おおおおおおおおおぉッ!」


 絶望に押し潰ぶされそうになりながら、俺は絶叫し大太刀を振る。目の前を即死レーザーが通過していく。間一髪の所でそれを回避し、すぐさま懐に潜り込んでスキルを叩きこむ。緊張で手が滑りそうになる。心臓が早鐘を打つ。

 周囲の事を気にしている暇は無かった。ただ自分が生き延び、攻撃する事だけに必死だった。連携などとっくに崩れており、皆がバラバラになっていた。しかし連携を立て直す暇はない。サタンの攻撃がそれを許さなかった。 

 普段から連携を組んでいる者達は、自分の仲間とだけ連携しているようだった。言葉が要らない程の信頼があるからこそ出来るそれを、俺は真似する事は出来ない。ただ生き残る為だけに、身体を動かした。

 サタンのHPがレッドゾーンに入ってから、即死レーザーを連発するようになった。速度は今までの非ではない。ギュインと音がした瞬間にはレーザーが目の前まで迫っている。

 足を滑らせ、回避が遅れる。

 レーザーが目の前に迫った。


「っ」


 残りのスタミナを全て消費し、《残響》を発動する。バリンと音が響いたと同時に、サタンの背後へと瞬間移動する。

 俺はその首を目掛け、大太刀を振るった――――――――。


――――――――――――


「終わった……のか?」


 気付けば俺達は武器を放り捨て地面に倒れていた。いつサタンとの戦闘が終わったのか覚えていない。誰もが息を荒くし、その顔に疲弊の色を浮かべている。サタンを倒した事によって手に入れたアイテムを確認する余裕はない。ボスを倒したという喜びに浸る事も出来ない。あるのはただ、生き残ったのか、という実感の無い思いだけだった。

 自分が生きている事を確認し、心に余裕が戻ってきた俺は慌てて周囲を見回す。最初に比べ、かなり人数が減っている。生き残っているプレイヤーの顔を確認していき、その中に栞がいるのを確認し、俺は再び地面に倒れ込んだ。


 これで、ようやく第二十九攻略エリアに到達した。これだけ強力なボスを倒してなお、まだ終わりではない。そう考えると絶望が胸の中に広がっていくのを感じた。





 この日、プレイヤー達は最後・・の攻略エリアに到達した。

 




  そして、そこで俺は地獄を見る。

 


完結したら番外編で色々書こうかな

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