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《Blade Online》  作者: 夜之兎/羽咲うさぎ
―World End―
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活動報告で雫月ユカさんの書いたラフ画像を乗せたので、興味のある方は覗いてみてください。

アカツキ君が格好いい…。

 第二十一攻略エリア《セントヤード》のボスまで辿り着くまでに死んだプレイヤーは六人、ボスである『禁聖女』インヴィオアビリティマリアのボス攻略時に死んだプレイヤーは六人。

 死者は合計十二人。

 今回のエリア攻略で死んだプレイヤーは、今までのエリア攻略と比べると比較的少ない人数だった。ガロンのギルド《烈火》が、攻略組の一歩手前で燻っているプレイヤーの育成を開始したお陰で、攻略組の人数も少しずつだが増えてきている。他のギルドもそれと同じように育成を開始した為、今後も攻略組の人員不足の心配はしなくて良さそうだ。


 

《セントヤード》は広大な大平原で、十字架がいくつも点在している。罠は一切無い。しかし出現するモンスターがとても堅く、強かった。攻略組は皆万全に体勢を整えてから攻略に乗り出している。しかし、モンスターの予想外の堅さに六人という犠牲者が出てしまった。

 大平原をひたすら北に進んでいくと、やがて空が曇り始める。最初の方はただの天候の変化かと思われていたが、どうやらこのエリアの仕様だったらしい。そして更に進んでいくと巨大な十字架が大量に地面に突き刺さっているのが見えてくる。そこがボスの登場する場所だ。

 曇り空が突如と割れ、そこから差してくる光と共に、ボスである『禁聖女』インヴィオアビリティマリアが現れる。

 《隠しエリア》と違い、通常のボスは部屋から脱出出来れば離脱が可能だ。精鋭の調査部隊が送り込まれた。その調査部隊のうち、二人がボスにやられた。インヴィオアビリティマリアの攻撃の中に、ガード不可能なレーザーがあったのだ。レーザーの速度はそこまで速く無いが、威力は高い。しかもガードが不可能。 

 そんな調査部隊によってボスのデータが収集され、ボス攻略会議の後、攻略組による本格的なボス攻略が行われた。

 白い女神像が巨大な十字架に磔にされている。これがインヴィオアビリティマリアの本体だ。磔にされた女神像は浮遊して移動する。移動しながら至る所に魔法陣を生み出し、そこからレーザーを発射してこちらに攻撃を仕掛けてくる。魔法陣から放たれるレーザーは威力は高いがガードする事が出来るため、そこまでの脅威では無かった。しかし厄介なのは女神像本体からの攻撃だ。高速で発射され、威力は低いがプレイヤーの動きを一定時間止める超音波攻撃。そしてガード不能、広範囲、高威力の薙ぎ払いレーザー。

 女神本体の口が開き、魔法陣が発生したかと思うとそこに光が集まっていく。そしてそれが溜まった時、薙ぎ払いレーザーが発射される。これが調査部隊のプレイヤーの命を奪った攻撃だ。薙ぎ払いレーザーの前ではタンク部隊は用をなさない為、全てのプレイヤーが死に物狂いで回避した。速度はそこまで速くないため、移動速度の遅いプレイヤーでも回避は可能だった。しかし女神のHPが赤くなると、この薙ぎ払いレーザーを連発してくるため、命中したプレイヤーが何人か犠牲になった。

 恐らく攻略組最高の耐久力を持つ、アーサーがこのレーザーからプレイヤーを庇ったが、彼のHPが一撃で赤色になったのはプレイヤー全員が冷や汗を流した。


 犠牲を出しながらもボスを攻略した俺達は、いつもの様に《照らす光》が開くパーティに参加する。俺もボスを倒せてホッとしながら、リンをつれてパーティに向かった。攻略組ではないが、俺の知り合いでもある手斧も呼んでいる。来るかはどうか分からないと言っていたが、来てくれると嬉しいな。



 慣れていた。

 そう、俺は数ヶ月でこの世界に適応していた。最初にボス会議に参加した時は、全身を震わせていたのに。もしかしたら、これは良い事だったのかもしれない。適応出来なければ、どこかで死んでいただろうから。

 しかし、この『慣れ』のせいで俺は『油断』し始めていたのかもしれない。

 俺がそれに気付いた時には、手遅れだったけれど。

 後の、祭りだったけれど。


――――――――――――


「フェスティバルアフター」


 バイキングで好きな料理を皿に乗せていると、カタナが唐突にそんな事を口にした。しばらく何が言いたいのかを考えた後、それじゃ祭りの後だろ、だとかお前最近影薄くねとか色々と突っ込みの言葉が思い浮かんだが、カタナが続けて言葉を発したので突っ込まずに黙っておいた。


「人生、いつ死ぬかわからないんだし、後悔したくないよね」

「そうだなあ。でもお前って『今を楽しむ為に生きてる』みたいな感じだから後悔とか無いんじゃないの?」


 俺の結構失礼な言葉にカタナは苦笑して、並んでいる料理を手掴みで口に放った。いやお前皿に乗せて席で食べろよ。


「そうだねえ。今の所は無いけれど、やりたい事はあるよ」

「やりたいこと?」

「うん。まあそれはそれとしてアカツキ君。僕は何かを存分に楽しむにはさ『ドラマ』が必要だと思うんだ」


 カタナの唐突な話題変更にはもう慣れている。俺は『っげちょっぱ』という訳の分からない名前の料理に手を伸ばす。置いてあるオタマでそれを掬い、皿に乗せる。液体かと思ったがどうやらゼリーのようだ。なんかうねうね動いてる気がするが目の錯覚か? 何故名前の頭に『っ』がついているんだろう。


「ドラマ?」


 皿の上で踊るっげちょっぱに戦慄しながら、カタナに言葉を返す。こいつはもしかしたら意外とロマンティックなのかもしれない。

 

「そう。物語とでも言うのかな。唐突に起きるのではなく、ストーリー性が大切なんだよ。これ伏線だから覚えておいてね」

「はいはい」


 カタナのよく分からない言葉に適当に返し、皿に料理がいっぱいになったので一度席に戻る。カタナはもう少し物色しているらしい。というかあいつ皿持ってないじゃん。手掴みで食べてんじゃん。皿に乗せろよと注意するべきだった。

 席に戻ると、栞とリン、らーさんや瑠璃などが話をしていた。この四人はいつの間にか仲良くなったらしい。リンに友達が出来るのはいいことだ。微笑ましい。

 ……さっきカタナに皿に乗せろと注意すべきだと思ったが、瑠璃の様に皿に山盛りにしてくるのはどうかと思う。あ、っげちょっぱがある。皿から逃げようとしてるのを、瑠璃がじゅるるるるるっと吸い込んでいる。手にしている黒いゼリーのようなのを見て、返してこようかなと一瞬思ったが、瑠璃が美味しそうにしているのでやっぱり食べる事にした。


「アカツキくーん、ここここ」


 席に近づくと、俺に気付いたらーさんが隣の席をポンポンと叩いたので、そこに座らせて貰うことにした。リンがチラッとこっちを見てきたが、まあいいか。こいつも少しずつ成長しているのだ。俺とベッタリしているのも良く無いだろう。まあ俺が成長しているかどうかと聞かれたら自信を持って答えられないのだが。

 らーさんとはあれからかなり仲良くなった。二人で居酒屋っぽい店に行く事もしばしば。瑠璃とも仲良くなったようで何よりだ。

 

「なあ、そのっげちょっぱって美味しいか?」


 瑠璃に黒いゼリーについて聞いてみると「ジュルルルルルルル、名状しがたい何ともいえない微妙な味」と返された。一体どんな味なんだよ。気になって俺も食べてみると、うん、名状しがたい何ともいえない微妙な味だった。なんだろう、これマジでなんなんだろう。口の中で動くんですけど。口から逃げ出そうとしてるんですけど!!

 後から知ったが、っげちょっぱはブラックスライムというモンスターから取れる素材を利用した料理らしい。この絶妙な名状しがたさは現実では味わったことがない。どういう味覚情報を使用したんだ……。


「そこで兄さんがバーンと相手を殴って登場したんですよ」

「それは格好いいですね……」

「まさに主人公(顔はモブ)」

「ジュルルルルルルルルル」


 栞達は何やら俺の話で盛り上がっているようで、会話に参加しづらい。得意げな顔をしながら話をする栞とその話を聞いてリアクションを取っているリンとらーさん。そしてっげちょっぱを延々と吸い続ける瑠璃。

 顔がモブって、とか、いつまで吸ってるんだよ、とか言いたい事は色々あったが、まあ楽しそうなので水を差すのは止めておこう。

 しばらく料理を食べていると、部屋の中をキョロキョロしながら歩いている手斧を発見した。おーいと声を掛け、手を振ってやると俺に気付き、こっちにテコテコと駆けて来る。可愛いなぁ。


「アカツキさん、皆さん、こんばんはっ」

「おう。今日は来て大丈夫だったのか?」

「はいっ」

「じゃあ一緒に料理取りに行こうか」

「ありがとうございますっ」


 俺も料理はあらかた食べてしまったし、手斧と一緒に料理を取りに行くことにした。

 手斧と他のメンバーも何回か会っているため、そこそこ仲が良い。

 しかし、俺の方に皆がジト目で向けてくるのは何故だろう。瑠璃が「ジュルルルルロリコンルルルルルルル」と何かを言ったような気がするがまあいいか。

 手斧ちゃんと二人で料理を取りに席を立った。


 二人で他愛も無い話をしながら歩いていると、ふと手斧がこんな事を言い出した。「アカツキさんって周りに女の子沢山いますけど、誰かと付き合っているんですか」と。その時に脳裏に浮かんだのはリンだったが、しかしあいつと俺は付き合っている訳ではないし、どちらかというと家族という感じだ。それにあいつ中学生だし……。イエスロリータ、ノータッチ。めっちゃ触ってるけど。


「俺、女の子と付き合った事無いんだよね。今もね」

「えーそうなんですか?」


 手斧は驚いていたけれど、まあ本当の事だしな。俺を好きだと言ってくれた女の子はいない。だからリンとかとベタベタしてうへへへへと思わないことも無いのだが。まあ自制はできている。


「じゃあ私が付き合ってあげてもいいですよー?」


 手斧ちゃんったらマジ天使。だけどね……君と付き合うとリンよりもマズイので……。


「ありがとなー。もう少し大人になってから、もう一度言ってくれたら嬉しいな」

「えー……私もう大人なのに」

「はは。何歳?」

「20です」

「またまた」


 本当だもん、とむくれる手斧ちゃんかわいいなあ。頭をポンポンと叩いて、本当だもんーと怒っている手斧ちゃんをなだめてやる。

 それから料理を皿に乗せ、席に戻って皆とわいわい楽しく話した。

 今回のパーティも充実していた。



――――――――――――

 

 パーティが終わって、俺とリンは店に帰ってきた。泊まっていったらどうかと栞に言われたが、リンもまだ眠くないようだし、断っておいた。

 

「ふう……」


 防具を脱いで楽な格好をし、ベッドに飛び込む。

 疲れた。

 ようやく21か。まだ残り9個もエリアが残っていると考えると、また引き篭もりたい気分になってくる。今日のあの薙ぎ払いビームはマジで死ぬかと思った。《空中歩行スカイウォーク》で上に跳んで回避したけど、足元を通って行くあれには肝が冷えた。


「お兄ちゃん?」


 ベッドでゴロゴロしていると、ドアがコンコンとノックされ、外からリンの声が聞こえてきた。最近はよく俺の部屋にやってくる。どうしたんだろうな。


「どうしたー?」

「一緒に寝ていい?」

「ああ、いいよ」


 部屋の中にリンが入ってきた。以前は枕を持ってきていたのに、最近では俺の腕を枕にして寝たいと言っている。現実と違って腕が麻痺したりしないから良いんだけどさ。

 モゾモゾと布団を捲って中に入ってきた。俺の腕の中にリンの頭が乗る。ゴロゴロと腕の上を転がって、俺と身体が密着する所まで近付いて来た。枕にしていない方の腕で、リンの頭を撫でる。んーとリンが気持ち良さそうに目を瞑る。しばらく黙って頭を撫でていると、リンが口を開いた。


「ねえ、お兄ちゃん。もしさ、現実の世界に戻れたらさ、どうする?」

「どうする……。うーん……。とりあえず仕事探すかな」

「うー。そうじゃなくてね……ほら、現実に帰ったら、私とお兄ちゃんって住んでる場所違うでしょ?」

「そうだな」

「そしたらさ……会えないし……」


 リンが身体に腕を回してくる。


「だったら、俺がリンに会いに行くからさ」

「ほんと?」

「本当だよ。休みの日とかに会いに行くから、一緒に買物とかカラオケとかしようぜ」

「んー……。カラオケ、歌下手だからや」

「そんな事言わずに一緒に行こうぜ。リンの歌聞きたい」

「うー……。でも私もお兄ちゃんの歌聞きたい」


 リンが甘えた声を出し、俺の身体に頬ずりしてくる。俺は相変わらず頭を撫でる。

 しばらくしていると、眠気がだんだんと瞼を重くしていき、意識が遠のいていく。


「約束だからね」


 完全に眠る前に、リンがそう言った気がした。


 



 


 


 

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