第97話 レベルアップ
それから勇者と出会ったのは二週間後のことだった。
本当はすぐにでも再戦を始める予定だったのだが、奴らの行方が分からず遭遇することができなかったのだ。
これにはいくつかの理由がある。
まず、俺が施した妨害工作によって世界情勢は狂いっぱなしだ。
真偽のあやふやな情報が錯綜し、どこもかしこも戦争状態に陥っている。
正義も悪もあったものではない。
無政府的な行動が蔓延し、とても文化的な生活を送れる状況ではなかった。
当然、世界全土が災厄認定された勇者のことを探しているのだが、諸々の影響で眼前の敵国を優先しなければいけない事態だ。
どこも捜索活動を行えるだけの余裕がなかった。
おかげですっかり勇者の居場所が分からなくなってしまった。
たまにそれらしき情報が手に入るものの、駆け付ける頃には既に立ち去った後ということが何度も発生した。
きっと賢者の使えるワープの魔術で逃げ回っているのだろう。
よほど上手くやっているのか、彼らの姿を目撃することすらできない。
勇者パーティーが決戦を避ける理由については、早い段階から判明していた。
彼らはレベル上げを行っている。
すなわち世界各地で戦闘を繰り返して、それによって得た経験値で戦力のを底上げを図っているのだ。
勇者は別格だが、他のメンバーは弱いままである。
俺はおろか、黒魔導士と博士のタッグにも勝てそうにない連中ばかりだった。
そのため最終決戦に挑む資格もないと気付いたのだろう。
だから彼らは、ワープで逃げながら世界各地の強い人間やモンスターを殺害して経験値を掻き集めている。
これに対して俺達が取った行動は勇者パーティーの模倣――すなわち経験値稼ぎであった。
早い話、俺達も強くなっておこうと考えたのだ。
馬鹿正直に追いかけたところで良いことはないので、開き直って奴らを実力で突き放すための努力をすることにした。
まだ無事な街やモンスターの巣、盗賊のアジトなんかを見つけるとすぐに襲った。
黒魔導士が大規模魔術を連打したり、博士が大量の毒ガスを蔓延させる。
以上の方法でそこに生きる存在を殲滅して経験値を荒稼ぎした。
ついでにシナリオチャートを確認して、強化系のイベントは残らず取得しておく。
かなり効率的だが、当然ながら勇者パーティーも同じ方法を採用する。
必然的に奪い合いへと発展した。
経験値が豊富な場所は限られており、だから互いの能力やペースを加味して殺戮を展開する。
すぐそこまで迫った決戦に合わせて少しでも実力を上げていく。
こうして俺達は、勇者パーティーと協力しながら世界破滅に貢献するのだった。




