第95話 決戦前夜
仮眠を取った後、俺は単独で行動する。
勇者パーティーとの決戦に合わせた妨害工作を張っておくことにした。
黒魔導士と博士は休憩中だ。
二人に手伝ってもらった方が早いが、ここは休んでもらうべきだろう。
決戦では彼らの力を借りることになるので、今のうちに英気を養ってもらおうと思う。
まず俺は、世界各国の権力者を洗脳した。
さらに専用アイテムで下僕に仕立て上げると、勇者パーティーを災厄として認定させた。
災厄とは、この世で最も罪深き賞金首を指す言葉だ。
ただ、実際は形骸化したシステムであり、古に君臨した大魔王を除くと、誰も認定されたことがなかった悪名である。
ゲームでも設定だけが登場するワードだったが、異世界では問題なく発令することができた。
もっとも、かなりの強硬手段に手を染めたことは否めない。
しかしこれが最も効率的なのだ。
洗脳はさすがにズルだが、それだけ効果も抜群である。
嫌がらせの面白味が減ってしまうため、あまり使いたい作戦ではなかったものの、この状況で選り好みもしていられない。
ちっぽけなこだわりを捨てたことで、勇者パーティーは手配レベル10に加えて災厄認定を受けた。
今まで以上に人類から敵視されることだろう。
勇者抹殺が名目なら、どのような戦争行為も容認される。
ここぞとばかりに他国侵略に動く国や、大規模魔術の実験を行う団体など、どさくさに紛れて暴れ始める勢力が現れるはずだ。
カオスなことになってきたが、これでいい。
世界中で戦禍が広がることで勇者達の逃げ場は無くなる。
あのチートモードなら負けることはないだろうが、仲間達は弱いままなのだ。
さぞ足手まといになってくれているに違いない。
こちらと違って何らかの準備をする余裕はないはずだった。
他にも俺は、シナリオチャートを参考にしながら、勇者が有利になるイベントを徹底して潰していった。
特に残機を増やしたり、武器や防具を強化するイベントは念入りに進行不能にする。
鍵となるアイテムや魔物を抹消して絶対にクリアできないように細工した。
初心に立ち返って考えると、これらの妨害が侮れない。
殺し合いでは僅かな差が結果を左右する。
この局面で勇者の聖剣が直せないのは致命的だろう。
賢者や錬金術師なら修理くらいできるだろうが、それでも万全とは言い難い。
俺達との戦い、不完全な聖剣で挑むことになるはずだった。




