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厄介者としてパーティーを追放されたので勇者を殺してみた ~【シナリオチャート認識】+【データ改竄】で異世界を謳歌する~  作者: 結城 からく


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第91話 超越勇者

 博士の逃走劇に続いて、今回も長くは持たなかった。

 距離を詰め切った勇者が黒魔導士を押し倒し、馬乗りの体勢となる。

 魔術で肉体を穴だらけにされながら攻撃されながらも、彼は頭上で組んだ両腕を振り下ろす。


 刹那、黒魔導士の顔面が粉砕された。

 彼女のステータスでは耐えられるはずもなく即死だ。

 四肢がびくびくと痙攣しているのが見えた。


 勇者はゆっくりと立ち上がる。

 ほとんど肉塊状態だった身体が高速再生を遂げていく。

 衣服はズタボロで血塗れだが傷は消えていた。


 幾多の即死魔術を受けながらも、それらのすべてを耐え切ったのである。

 驚異的なタフネスだった。


 勇者は振り返って俺を注視する。

 だらりと両腕を垂らした脱力気味の構えは、隙が多いように見える。

 しかし、放つ攻撃すべてが即死ダメージを超越する。


 それでも俺のHPが尽きることはないものの、若干ながら不安が過ぎる。


(勇者はシステムを無視し始めている。俺のチートも無効化できるんじゃないか?)


 ただの憶測だが可能性は十分にある。


 俺はこの世界をゲームだと解釈していた。

 故に自己データという範疇なら自在に弄ぶことができる。

 逆に言うと、システムの天井は抜けられない。

 ゲームの中でしか強みを発揮できないのだ。


 一方で勇者は限界など存在しないと信じている。

 その認識がチート超えを実現した。

 残機を犠牲にした分の補正も相まって、凄まじいまでのパワーアップを果たしている。


(参ったな。まさかこんなに強くなるとは)


 闇堕ちの影響力に驚いていると、勇者が目の前まで歩いてくる。

 互いにいつでも攻撃できる間合いだ。

 肉体スペックで比較すると有利なのは勇者だろう。


 そういった事実を理解しながらも、俺は表情を崩さない。

 へらへらした笑みのまま話しかける。


「どうした。仲直りの握手でもするかい?」


「……仲間を殺された気分はどうだ」


 勇者は声を落として尋ねる。

 俺は耳に手を添えてわざと訊き返した。


「あ? 何だって」


「自分の仲間を殺された気分はどうだと聞いている」


「別に感想はないな。涙でも流しながら思い出でも語ればよかったかい」


「もう、いい。期待した僕が愚かだった」


 勇者は無表情に言うと、破損した聖剣を引き抜いた。

 それで斬りかかってくるかと思いきや、刃を自分の首筋に当てる。


 勇者は血みどろの顔で毅然と宣言する。


「――最終決戦だ。皆と一緒にあなたを殺す」


 刃こぼれした聖剣が、勇者の首筋を切り裂く。

 噴き上がる鮮血を眺めながら、彼は静かに崩れ落ちた。

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