第88話 不屈の魂
「ま、じか……っ」
俺は掠れた声で呻く。
喉から顎にかけての裂け目から鮮血が噴き出し、勇者を赤く濡らしていく。
俺は顔面を割ろうとする聖剣に構わず前傾姿勢を取った。
爆発属性を持たせた手を伸ばすも、勇者は華麗に弾いて俺の顔面を十六分割にする。
そして胴体を蹴り飛ばした。
尻餅をついた俺は再生しながら笑う。
勇者は冷たい眼差しで俺を見下ろしていた。
(即死魔術が直撃したはずだ。なぜ死なない?)
聖剣の振り下ろしが叩き込まれて、俺の頭部を縦断する。
その勢いで腹まで真っ二つにしやがった。
俺は地面の土を握ってマシンガンに改竄すると、狙いも付けずにぶっ放す。
勇者は至近距離での乱射も聖剣で的確にガードし、さらに蹴りで俺の肉体を損壊し続けた。
後方から黒魔導士が即死魔術を連発していた。
いずれも勇者に命中するが、彼は少しふらつくだけで死ぬことはない。
どれだけ傷付いても俺への攻撃を強行してくる。
絶えずズタボロにされながらも、俺はやがて疑問の答えを見つけた。
(こいつ、耐性を持っているのか)
勇者は黒魔導士からの術のダメージを軽減している。
さらにカンストを超えたステータスで無理やり耐えているのだ。
ゲームでも勇者が高レベルになると各種耐性を習得する。
ダメージそのものを無効化するわけではないものの、この鬼畜な世界においては重要な防御手段だ。
加えて傷も再生していることから、勇者は高度な自動回復系のスキルも手に入れているらしい。
単独で虐殺を繰り返しながらも、継続して戦える理由がこれだ。
即死ダメージも数秒で治癒しているので、かなりの高性能である。
俺の再生とはまったく異なるプロセスだが、見かけは同じ具合だろう。
どんな傷も自動で治る不死身野郎というわけだ。
(まあ、苦痛を耐えられるのは本人の精神力だろうが……)
みじん切りにされながら感心していると、頭上から銃声が聞こえた。
勇者は聖剣でガードする。
その刃にスライム状の液体がべっとりと密着していた。
地面にもへばり付いて動きを阻害している。
屋根の上には拳銃を構えた博士がいた。
「だいたい能力は分かりやした。助太刀させていただきやすぜ、旦那」
スライム上の液体は彼の毒だったのだ。
弾丸に仕込んだ毒が聖剣に当たって破裂したらしい。
そうすることで、不死身の勇者の攻撃手段を封じにかかっていた。




