第81話 戦いの果てに
俺は毒に侵されたまま突進し、闇の魔神の力を解放する。
滲み出した漆黒が室内を包み込んでいく。
博士は落ち着いた動作で指を鳴らす。
床から毒ガスが噴き出して、侵蝕する漆黒と衝突した。
互いの力が干渉し合って拮抗する。
そして毒ガスに触れた俺の身体が蒸発し始めた。
やはり博士の毒には敵わないらしい。
俺は飛び退いて接近を諦めると、外見データを元の身体にした。
闇の魔神で少しだけ驚かせることができたが、もはや使い捨て未満の変身となってしまった。
まあ、所詮はその程度だ。
裏ボスの地位が泣きそうだが仕方あるまい。
(なんでもありの毒だな。とても厄介だ)
博士は多種多様な毒を常備している。
攻防において隙の少ない実力者だ。
彼の行動すべてに毒が絡んでいると言っても過言ではなかった。
俺は近くにあった机から書類を引っ掴み、導火線に火の点いたダイナマイトの束に改竄した。
側面には黒いドクロマークが心臓を噛むイラストが描かれている。
禍々しいデザインの通り、これはただのダイナマイトではない。
正式名称はGマイトだ。
Gはジェノサイドの略である。
とあるシナリオで敵の支配する塔を破壊するためのアイテムだった。
キーアイテム扱いなので、本来なら戦闘で使うことはできない。
しかし、データ上は最強クラスの攻撃力が設定されていたことで話題となった。
そのパワーは異世界に来ても健在だろう。
「ほら、プレゼントだ」
俺はGマイトを放り投げる。
博士はその正体に気付くと、さすがに嫌そうな顔をした。
「それはちょいと看過できやせんなぁ」
博士が腕を振るう。
白衣の袖から緑色のゼリー状の物体が飛び出した。
それは彼が飼育する劇毒スライムだった。
スライムはGマイトに絡み付いて、丸ごと包み込んで消化する。
そして、ぽよぽよと跳ねながら博士のもとに戻った。
彼はスライムを手に載せて苦笑する。
「さすがにここを爆破されやすと困るもんでして」
「気にすんなよ。無限に量産できるんだ」
俺は近くの書類を片っ端からGマイトに仕立て上げていく。
今回は導火線に火が点いていないバージョンだが、いつでも大爆発させられることは伝わっただろう。
それを見た博士は肩をすくめ、スライムを仕舞って構えを解いた。
彼はどこか吹っ切れた態度で笑う。
「ひははっ、こいつは参った。実力の確認は十分でしょう。とんだ反則さんがやって来たもんだ」
「じゃあ話を聞いてくれるか?」
「あっしでよければ是非」
そう言って博士は歩み寄って来るのであった。




