第77話 スカウト活動
数分後、俺と黒魔導士は屋敷の前にいた。
今から毒薬博士のもとを訪問するのだ。
勇者パーティーの殺害にあたって協力関係を結ぶのが目的であった。
「よし、準備万端っすよ」
黒魔導士はリュックサックを背負ってやる気満々だ。
屋敷内には分身を数十体ほど用意してある。
状況次第ですぐさま送り出せるように待機させていた。
彼女は見送りとして出てきた分身達を指差して呟く。
「あれだけ用意したら大丈夫っすかね」
「どうだろうな。皆殺しにされる可能性は十分にありそうだ」
「完全にヤバい奴じゃないっすか」
黒魔導士は呆れた顔になる。
しかし、相手は執行官なのだから当然だろう。
常軌を逸した変人が、世界トップクラスの暴力を宿した存在なのだ。
博士はその中では穏やかな性格だが、殺し合いになればその狂気を躊躇いなく発揮してくる。
標的が何者だろうと本気で毒殺しにかかる男であった。
シナリオ展開によっては国を滅ぼすような危険人物だった。
そんな狂人に今から会いに行くわけだが、アポを取ったわけでもない。
いきなり戦闘になる恐れもあった。
黒魔導士は賢者と比肩するような超人である。
しかし、彼女でも数十体の分身では足りなくなるかもしれなかった。
(スムーズに話が進めばいいんだけどな)
正直、どうなるかは俺も予測不可能だ。
博士は非常に気まぐれである。
黒魔導士を陥落させた竜酒のように、好きなアイテムを渡せば友好的になる性格でもない。
本当に運任せだった。
最悪、半殺しにして拘束するしかないだろう。
黒魔導士の魔術で洗脳する必要性がある。
ただ、できるだけ本人の自由意思を尊重したいものだ。
「じゃあ行くぞ」
「了解っす」
俺達は同時に移動する。
向かった先は黒い平野だ。
そこに堂々とそびえ立つのは、ピラミッド型の白い建物だった。
これが研究所である。
難攻不落の鬼畜施設で、数多くのプレーヤーのメンタルを破壊した特殊ダンジョンだった。
魔王軍でも滅多に攻め込まない場所とまで言われている。
それどころか一部の執行官は、魔王軍と不可侵の条約を結んでいるという噂があった。
ゲーム中に真偽を明らかにできる描写はないが、各所で仄めかされているので事実なのだろう。
黒魔導士は、研究所までの道を阻む障壁を注視する。
「結界で転移妨害されてますね。どうします?」
「俺が壊そう」
いくら頑丈でもチート能力なら関係ない。
俺は拳を握って結界を殴り付ける。
結界は粉々に砕け散って四散した。
その時、頭上でブザー音が鳴り響く。
どうしたのかと見上げると、緑色の液体が大量に降り注いでくるところだった。




