第76話 新たな仲間候補
黒魔導士がふと思い出したように俺に質問する。
「そういえば、執行官って何人もいますよね。スカウトの候補は決めてるんすか?」
「一人だけな。まあ、そいつしか確実な接触方法が分からないからだが」
執行官はランダムに出現する。
固定のシナリオがほとんど存在せず、チャートを見ても出会うのが困難だった。
もちろんメインストーリーにも絡んでこない。
手配レベルの上がりすぎたプレーヤーをゲームオーバーに追い込むためのマシンといった立ち位置を徹底している。
キャラの掘り下げに乏しく、謎の勢力として認知されていた。
「ちなみに候補は誰なんです?」
「毒薬博士と呼ばれる男だ。かなりの曲者だが、仲間になると心強いだろう」
俺はその名を口にする。
彼は執行官の中でもトップクラスの強さを誇る。
手配レベルが8以上でないと出現しないが、その条件に見合うほど厄介だった。
本格的に狙われる形になったらゲームのリセットを推奨されている。
「知らない人ですけど、ムカイさんが選ぶくらいなので畜生野郎なんでしょう」
「どういうイメージだよ」
「そのままっすよ。ちなみに博士の居場所はどこっすか?」
「魔王の占領地の外れに研究所を持っている。普段はそこに住んでいるはずだ」
「また物騒な場所に暮らしてますね……」
「環境的に実験がしやすいのだろう」
俺は答えながら立ち上がる。
そして、食べかけの肉まんを銃に改竄して所持した。
「研究所に乗り込むぞ。さっそく今から勧誘しよう」
「行動力が凄まじいっすね。別に明日でもよくないっすか」
「博士は執行官だ。勇者殺害でいつ動き出すと、居場所が分からなくなってしまう」
勇者を監視しておけばいずれ会えそうだが、その時は戦闘でゴタゴタしているだろう。
巻き添えになって殺される未来まで見えた。
やはり事前に根回しできた方が楽だろう。
冷静に考えると、呑気に食事をしている場合ではなかった。
「ムカイさんなら不思議な能力で特定できるっすよ」
「俺の能力は勇者パーティーにしか働かないんだ」
「肝心な時に使えないっすね」
黒魔導士が辛辣な一言を述べたので、俺は反撃の言葉を投げかける。
「竜酒、いらないのか」
「スカウト活動は迅速な動きが求められるっすね。すぐにでも向かいましょう」
速やかに立った黒魔導士は、空瓶を片手に敬礼するのであった。




