第71話 狙撃対決
俺は拡大された視界に勇者パーティーを収める。
急遽始まった狙撃対決だが、負けるつもりはない。
やるなら正々堂々と勝ちたかった。
残るメンバーは勇者、錬金術師、賢者の三人。
当然ながら最も弱いのは錬金術師だ。
トリッキーな術を使える上、成長すると唯一無二の活躍ができるようになる彼女だが、他の二人に比べると基礎スペックが貧弱である。
加えて全身各所を負傷しており、二人に庇われながら動いている状態だった。
魔術で治癒しながら移動しているが、脱出まで持つか微妙なところだ。
俺は錬金術師に狙いを絞って狙撃をする。
連続で射撃してみたが、なかなか当たらない。
眉毛の太い凄腕スナイパーではないので、激しく動く標的を狙うのは難しいのだ。
たまに住民を誤射する始末だった。
そんなことをしているうちに錬金術師が死んだ。
暴走する馬車のタックルに轢かれた挙句、額に穴が開いて即死したのである。
「よっしゃ! やってやったっすよ!」
横で黒魔導士がガッツポーズをした。
彼女が止めを刺したらしい。
魔術だけが得意かと思いきや、銃器の扱いもそれなりみたいだ。
少なくとも俺より上手だろう。
錬金術師の死を目撃した住民はまたも歓喜する。
これで三人目だ。
皆で分けたとしても大儲けできる。
報酬は国から渡されることになっており、残機制を考えるとかなりの出費になるだろう。
しかし、不足するようなら俺から支給するだけだ。
何も問題はない。
(本当に狂った世界だよなぁ)
俺は他人事のように考える。
世界を救う英雄が犯罪者扱いとは。
ちょっと報酬をちらつかせるだけで、住民達が敵となってしまうなんて酷い話だ。
助けられる立場にあるはずが牙を剥いてくるのは、物理的な被害よりメンタルがやられる事態だと思う。
俺ならば世界を救うことなんて放棄して、魔王と手を組んで滅ぼしにかかるかもしれない。
(それが許される扱いだと思うんだがね……)
俺はスコープの照準を勇者に向ける。
勇者は防戦一方だが、住民を誰一人として殺していない。
鞘で殴ったりはしているものの、気絶する程度に手加減していた。
この期に及んで無力化を徹底しているのだ。
(戦闘技術が上がっている気がする。レベルアップしているのか?)
この世界にそんなシステムは存在しないはずだ。
俺のチート能力だけが特例で、ゲーム版のルールを無理に持ち込んで適用している形である。
勇者達には反映されないはずだった。
しかし、急成長しているのは事実だ。
(ひょっとすると、俺が勇者を強く認識したことでチートの影響を与えているのか)
彼らにも多少ながらゲームシステムが適用されている可能性。
そう考えると不審なパワーアップにも納得する。
彼らがシナリオチャートを改変できることにも説明が付く。
勇者パーティーは俺と同一の能力を無意識に発動中なのだ。
偶発的にチートを振るうことで、俺の予想を超えてきていた。




