第7話 全滅
俺は魔術師の首をじっと見つめる。
苦痛と恐怖に歪んな表情だが、生憎とそれ以上の感情が湧くことはない。
ただのグロい生首である。
気付いたことと言えば、ノコギリでやったので断面が粗い点くらいだ。
俺は不要になった生首を勇者の前に転がしてやる。
「ほれ」
「うわっ!?」
勇者が尻餅をついて生首を凝視する。
すぐに背中を丸めて嘔吐した。
「そんなに驚くなよ。可愛い仲間だろ」
俺はむせる勇者の背中を撫でる。
こいつは三人の仲間が殺される間、ずっと棒立ちだった。
現実を受け止めきれずに思考停止していたのだ。
途中で攻撃してくるかと思ったが、そんなことも一切なかった。
正直、期待外れだった。
「情けないよなぁ。ずっと見下してきた傭兵に殺されかけている。勇者の名が廃れそうだ」
「どう、して……皆が……」
勇者は吐きながら泣いている。
ショックで立ち上がれないようだ。
俺はノコギリを捨ててポケットを漁ると、取り出した煙草に火を点けた。
しばらく無言で吸っていると、勇者がようやく顔を上げた。
「あなたは、何者なんだ……?」
「ただの傭兵さ。君達にとってはね。それ以上でもそれ以下でもない」
俺は煙草をくわえながら答える。
すると勇者がキッと睨んできた。
彼は鞘から聖剣を引き抜きながら叫ぶ。
「そうか、魔族の手先なんだな……ずっと僕達を嘲笑っていたのかッ!?」
「残念ながら外れだ。俺は魔族陣営じゃない。まあ、嘲笑っていたのは事実だがね」
その直後、勇者が斬りかかってきた。
俺は驚異的な速度の斬撃を避けて、差し伸ばした手を勇者の胸に当てる。
「――最寄りの教会からやり直しだ。また会おう」
言い終えると同時に、勇者の身体が爆発する。
爆炎に巻かれて四肢と頭部が四散した。
ミディアムレアとなった臓腑がぶちまけられて地面を汚していく。
【ちぇりーなゆうしゃ を たおした!】
【ムカイ は レベル が あがった!】
辺りを見回すと、先ほどまで俺を糾弾していた勇者パーティーの惨殺死体が散乱している。
それらは光の粒子となって消滅する。
残された俺は、勝利の余韻を味わいながらガッツポーズをするのであった。




