第66話 悪魔の契約
(手配レベルが10になれば、俺が手を下さずとも残機は削れていくだろう)
今回の狙いは、勇者パーティーを犯罪者にすることだった。
こればかりはチート能力でも改竄できない。
だから手間を惜しまず交渉を持ちかけている。
手配レベルは国を問わず有効だ。
各国の王のみが発令できる権限を持っている。
そもそも通常の犯罪者には適用されないシステムであり、絶対に捕まえなくてはいけない危険人物でようやくレベル1に至る。
以降は細分化されるわけだが、手配レベル10はもはや悪鬼羅刹の烙印だった。
唯一、魔王がここに該当する。
もはやこの領域になるとクリアが困難になる。
難易度が通常時の数十倍に跳ね上がり、旅をしている場合ではないのだ。
さらに通常の方法では手配レベルをリセットできなくなるため、どこにいても何度死んでも命を狙われるようになる。
縛りプレイの条件としては筆頭に挙がるものの、詰みの状況になることも多い。
攻略目的のプレーヤーは最初からやり直すべきだった。
俺は勇者パーティーをその状態に追い込もうとしている。
国王の目の前で土を掘った俺は、それを手に集めて情報を改竄する。
土は一瞬で山盛りの宝石になった。
驚愕する国王にそれらを押し付けながら説明する。
「俺は物質を自由に変換する能力を持つ。これで無限の財産を提供することができる。要求を呑んでくれればの話だが」
「ぬぅ……」
「さあ、どうする。この場で決めてくれ。俺には時間がないんだ」
さらに財宝を生成してやると、国王は深く悩み始めた。
交渉相手は得体の知れない危険人物だ。
まともに考えれば、話に乗るなど狂っている。
むしろ俺に手配レベル10を突き付けるべきだろう。
しかし、誘惑は強い。
宝石を抱える国王はそれを手離しそうになかった。
彼は唸るような声で俺に確認する。
「勇者を見捨てれば、巨万の富を得られる。そういう認識で、いいのだな」
「よく分かっているじゃないか! まさにその通りだ」
俺は手を叩いて肯定する。
駄目押しに宝石を増やして足元にばら撒くと、国王の心が折れた。
彼はその場に膝をついて静かに答えを述べる。
「是非とも協力させてくれ。我が権力で可能な範囲ならば、積極的に力を貸そう」
「オーケー、あんたは賢い選択をした。これからよろしく頼むよ」
俺は跪く国王を前にほくそ笑みながら、鷹揚に握手を求めるのだった。




