第65話 要求
話を聞き終えた国王は、まじまじと俺のことを観察する。
その眼差しは、懐疑的な色を隠そうともしていない。
「傭兵ムカイ……まさかそのような者が勇者の仲間におったとは」
「旅が始まった後、こっそり加入したからな。それにあの中じゃ目立たないのも仕方ない」
俺の他は華やかなハーレムメンバーだ。
そこにこんな男が混ざっても地味なだけである。
おまけに厄介者みたいな扱いなので、周囲からも俺は空気のように見られていた。
国王が知らないのも無理はない。
「お主は何が目的だ」
「要求はたった一つだけさ。それを叶えてくれるなら、多大な報酬を約束しよう。勇者達を裏切ることになるが、そんなことはどうでもよくなるはずだ」
「ふむ……」
唸る国王の目の色が変わる。
報酬という言葉に反応したのだ。
この男はとんでもなく強欲であった。
勇者が世界を救おうとする裏で、様々な策略を打って金儲けをしようとするのだ。
その悪事を暴くシナリオも存在するが、必然的に国王と戦うことになるため、ゲームクリア優先のプレーヤーはその展開を避ける。
それどころかグルになることで冒険の旅を支援してもらえるので、大半のプレーヤーにとって国王はATMみたいな存在だった。
対価は必要だが、一種のお助けキャラのような立ち位置なのだ。
(だから今回も助けてもらおう)
俺はニヤニヤと笑いながら、息を呑む国王を一瞥した。
そして要求を端的に告げる。
「――勇者パーティーを特級犯罪者として賞金首にしてくれ。手配レベルは上限値の10だ」
「何っ」
国王が仰天した。
尻餅をついて目を見開く。
驚きに歪む顔は、信じられないとでも言いたげだった。
「お主……その言葉の意味を分かっているのか!?」
「もちろん。勇者達は世界規模の悪党と認定されて、万国共通のお尋ね者になる。安息地の地は消滅して、魔王討伐も困難になるな」
『ファンタジック・スリル3』には手配レベルというシステムが存在する。
基本は0で犯罪行為を重ねると上昇し、数値が大きくなるごとに周りの反応も変化するのだ。
だいたい2か3辺りから普通に街を歩けなくなる。
兵士に捕まって投獄された後、然るべき対価を払えば数値はリセットされる。
ただし上限値の10になると解除は原則的に不可能だった。
特定のイベントをこなすことでしか償えなくなる仕様なのだ。




