第61話 次なる策略
翌日。
黒魔導士のベッドから起きた俺は、欠伸を洩らしながら立ち上がった。
床に散乱する服を着て、寝癖の付いた髪を押さえ込む。
そこまでやったところで、外見データを弄ればすべて直せることに気付いた。
若干の徒労を味わいながらもシナリオチャートを確認する。
闇の魔神に関するルートが昨日よりも進んでいた。
勇者パーティーが夜通しで行動して、全力で対策を打ってきているようだ。
おかげで闇の魔神の弱体化が深刻になっていた。
まだすべてのギミックが解かれたわけではないものの、おそらく時間の問題であろう。
今の状態でも十分に弱く、とても戦えたものではなかった。
各種耐性が切れているので、賢者の魔術で滅多打ちにされそうだ。
(闇の魔神はもう使い物にならないな)
俺は小さく嘆息を洩らす。
別に落ち込んだわけではない。
これくらいは予想の範疇だ。
勇者パーティーは当たり前だが優秀だ。
一夜にしてあの難関シナリオの攻略に取りかかっている。
実力的にはまだ早いはずだが、賢者のフォローが利いているのだろう。
今後はあいつらを殺す方法も考えないといけない。
闇の魔神は特殊な例だったものの、簡単に対策できる方法はあまり良くない。
どうやっても事態が悪化し、精神を抉るようなサプライズを仕込みたかった。
奴らのメンタルは超人レベルだ。
特に勇者などはそう簡単には壊れない。
こちらも気合を入れて考案しなければならないだろう。
どうにかして精神崩壊を起こしてみたかった。
思い付くアイデアをメモしていると、ベッドから唸り声が聞こえてきた。
眠そうな顔で起きたのは黒魔導士である。
「おはようっす」
「おはよう。よく眠れたかい?」
「はい、おかげさまで」
ボサボサの髪を撫で付ける黒魔導士はへらへらと笑った。
彼女は既に準備を整えた俺を見て尋ねる。
「これからどこに向かうんすか?」
「王都だ。色々と裏で仕込もうと思う」
メテオで街を吹き飛ばした時からやりたかった作戦がある。
勇者達は闇の魔神の弱体化に奔走している。
彼らが不在の間に済ませてしまいたい。
黒魔導士はベッドから這い出ると、ぐっと伸びをして息を吐いた。
「また悪い顔っすね。勇者に同情したくなりますよ」
「存分に憐れんでやってくれ。これから苦労するだろうからな」
「それは楽しみ……こほん。可哀想っす」
黒魔導士がニヤリと笑う。
彼女も負けず劣らず悪い顔をしていた。
なんだかんだで性格が似ているのかもしれない。
これだけ他人と意気投合するのは初めてだった。




