第6話 ノコギリ
俺は笑いを止めて無表情になる。
女戦士の死体を蹴り転がすと、いつの間にか離れた場所に立つ魔術師に話しかけた。
「何か言いたいんだろ。さっきみたいに教えてくれよ」
「どうして」
魔術師は怯えた顔をしていた。
何度か噛みながら詠唱をして、杖を俺に向けてくる。
しかし魔術は不発だった。
正しく呪文を唱えられなかったせいである。
パニックになる魔術師を見て、俺は思わず苦笑いを洩らした。
ゆっくりと歩み寄りながら優しく諭す。
「慌てずに言い直してみよう。きっと成功するはずだ。さあ、頑張って」
今度の魔術は成功した。
地面が振動し、石の粒が散弾のように発射された。
ただし、その場に俺はいなかった。
術の発動に合わせて疾走し、既に魔術師の背後を取っていたのだ。
俺は片手にノコギリを持ちながら彼女の肩に手を置く。
「惜しかったなぁ。あと少しで命中したってのに」
「……ッ」
魔術師がびくりと身体を震わせる。
こちらを振り向こうとしないのは、些細な動作が死に直結すると理解しているからだろう。
俺は無防備に手を回して魔術師の髪を掴み、その耳元で囁いてやる。
「不快で邪魔で臆病で性悪で貧乏で雑魚で地味な俺に殺される気分は?」
「死ね」
魔術師は涙を浮かべながらそう言った。
精一杯の意地であった。
俺は満面の笑みで頷くと、ノコギリを魔術師の首に当てて高速で往復させる。
ほんの数秒で首を切断して、迸る鮮血を浴びながら生首を掲げてみた。
特に達成感はないが、少しだけスッキリした。
【どくぜつろり を たおした!】
【ムカイ は レベル が あがった!】




