第59話 盛り上がる二人
俺はメテオで潰した街の方角を注視する。
しばらく待っても特に何も起こらない。
瓦礫地帯となった街の残骸は、悲惨な状態を晒していた。
(勇者パーティーは別の街で復活したようだ)
全滅すると教会で蘇るため、あの瓦礫の山から奇襲される可能性も考慮していた。
しかし、彼らは別の地点で復活したらしい。
メテオで教会が吹き飛んで機能を失ったか、そもそもここで祈祷していないのだろう。
どちらにしても好都合だった。
連戦は少し面倒だと思っていたのだ。
勇者達にとっても良かったはずである。
さらに残機を減らすピンチを避けられたのだから。
「ムカイさーん」
向こうから黒魔導士が駆けてくる。
近くまで来た彼女は、緩いテンションでお辞儀をした。
「お疲れ様っす」
「ああ。少し待たせたな」
「とんでもないっすよ。特等席で楽しませてもらいました。白熱してましたね」
黒魔導士は楽しそうに言う。
嘘ではなく、本当に満喫していたらしい。
確かに見応えはあったのかもしれない。
勇者の剣技は、実戦的でありながら一種の芸術のように美しい。
俺のフィニッシュも滅多に見れるものではない。
「いやー、見事な戦いぶりでしたね。こんなに強いとは思いませんでした」
「そうだろ? 真の実力は隠すタイプなんだ」
「やっぱり性格悪いっすね」
黒魔導士は遠慮なく発言する。
自覚は大いにあるので傷付きはしない。
「さっきの変身は魔術っすか?」
「いや、俺だけの特殊能力だ。魔術とは別物だな」
チート能力はシステム面に干渉する。
異世界においてどういったメカニズムで発動しているのかは俺にも分からない。
ゲームと酷似していると認識したことで使えるようになったのは確実だ。
そういった世界に対する視点一つで能力が与えられるのはよく分からないし、恐ろしくも感じる。
「ところで、代わりに勇者をやるって言ってましたけど本気っすか?」
「まさか。あいつを精神的に追い詰める嘘さ。少しでも惑わせることができれば成功だな」
「ですよねー。ムカイさんが勇者なんて、似合わなすぎて大笑いっすよ」
「結構はっきり言うよな」
「駄目っすか?」
「いや、最高さ」
黒魔導士には裏表がない。
だから話していて疲れないし、利害がぴたりと一致している。
裏切られる心配もないのが素晴らしい。
当初、性格的に合わなければ殺すことも視野に入れていたが、彼女とは今後も仲良くできそうだった。
「とにかく、これで全滅達成だ。祝杯の準備をしよう」
「名案っすね! 竜酒を飲みまくりましょうっ!」
盛り上がる俺達は、拠点である屋敷へ帰還するのだった。




