第53話 リベンジ
俺はポケットに入っていた紙くずを剣に改竄する。
生み出したのは蒼い刃を持つ魔剣だ。
持ち主の攻撃力を上昇させる代わりに、防御力が下がる効果を持つ。
一長一短な性能だが、即時再生が可能な俺にとってデメリットは無いに等しい。
そもそも勇者の聖剣は破格のパワーを有する。
チートで上げた防御力を無視するため、ステータスの数値は過信できない状態だった。
相手の攻撃は普通に通るものだと考えるべきだろう。
俺は魔剣を持ち上げて、切っ先を勇者に向けた。
「さっさと殺し合おうぜ。俺に復讐したいだろ?」
「…………」
勇者は黙って構える。
いきなり斬りかかってくることはない。
戦闘技術では圧倒的に勇者が優れているが、チート持ちの俺は不死身だ。
加えて即死攻撃も可能なので、気軽に接近できる相手ではない。
この二つの要素が、戦いを拮抗なレベルへと持ち込んでいた。
身構えていた俺はふと気になったことを訊いてみる。
「そういえば、あのメテオでなぜ死ななかった?」
「あなたの力で分からないのか」
「買い被るなよ。別に全知全能ってわけじゃない。把握できないことだってごまんとある」
「……皆が僕を庇った。街の保護を諦めて、僕を生かすことに全力を注いだんだ」
「そいつは泣かせる話だな」
二十連発のメテオを感知した時点で、勇者パーティーは全員の生存を放棄したのだろう。
それでも報復のチャンスを逃さないため、勇者の身を守ることに専念した。
いくら残機があると言え、死ぬのは恐ろしく怖い。
恐怖を乗り越えて勇者を保護したのである。
向こうには魔術を使える人間が三人もいた。
一人分の防御シェルターを構築することはそこまで難しくなかったはずだ。
そこに勇者がブーストを施せば性能はさらに向上する。
隕石の雨の中でも辛うじて生き残れるかもしれなかった。
破壊されずに済むかはある種の賭けだったのだろう。
それに打ち勝った勇者は、満身創痍ながらも俺の前に現れたというわけだ。
「……あなたには、良心の呵責がないのだな」
「どうだろう。よく心が冷たいとは言われるがね」
俺は気さくに言いながら魔剣で斬りかかる。
それを読んでいた勇者は半身になって回避した。
見事な回転切りによって、俺の首に裂け目を入れる。
「ぉあっ」
俺は喉から血を噴きながら魔剣を振り回す。
勇者は的確に防御或いは回避をこなした。
こちらの攻撃は有効打とならない。
やはり満身創痍でも勇者は勇者だ。
むしろ追い詰められるほど本領を発揮している気さえした。




