第49話 メテオのち
隕石群と結界の対決は、激突から一分が経過した。
残る隕石が命中し、結界の大部分が破壊されている。
しかしまだ辛うじて何枚か残っている。
信じられない話だが、勇者パーティーの防御が打ち勝ったのだった。
「……マジか」
俺はさすがに呆気に取られる。
なんだかんだで隕石が勝利し、街が崩壊するものかと思っていたのだ。
その予想をあいつらは覆してきた。
さすがは主人公グループである。
このレベルの奇襲でも不足だったらしい。
黒魔導士は悔しさと嬉しさの混ざった笑みを見せる。
「あちゃー、耐えましたよ。普通にすごいっすね」
「勇者の力で結界の強度を上げたんだろう。あいつは仲間と連携することで真価を発揮する」
基本的にオールラウンドな勇者だが、聖剣に宿る固有能力を解放することができる。
ゲーム風に言うなら主人公専用のスキルを使えるのだ。
その一つがブーストだった。
仲間のステータスを引き上げながら、魔術を数段階グレードアップするのだ。
連発できず数ターンしか持たないものの、その効果は絶大である。
ボス戦での先制攻撃や、ピンチの時の逆転技として使われるような技だった。
ただ、この世界の勇者はまだ習得していなかったはずなのだ。
少なくとも俺が追放されるタイミングでは覚えていなかった。
きっと地道に経験値を溜めてレベルが上がり、使えるようになったのだろう。
ブーストは特定のイベントで覚えるわけではない。
シナリオチャートでは識別できない部分だった。
もちろん勇者の能力だけで突破できる場面ではなかった。
魔術師と錬金術師と賢者という術者トリオがいたからだろう。
それが功を奏した。
唯一、魔術を不得手とする女戦士も、たぶん魔力回復薬を買い漁っていたのではないか。
街を覆っていた結界が消滅した。
向こうは危機が去ったことを確認したようだ。
黒魔導士は一つ息を吐いてその場に座り込む。
彼女は頬杖をつきながら俺を見やった。
「どうします? 先制攻撃が失敗しちゃいましたけど」
「何を言っているんだ。まだ攻撃は終わっていないぜ。むしろ今からが本番だ」
俺は折れた杖を改竄して未使用状態に戻す。
さらに足元の草を千切って改竄し、メテオステッキに仕立て上げた。
俺は計二十本の殺戮兵器を抱えてみせる。
その途端、黒魔導士の顔が固まった。
ぽかんと口を開けて思考停止している。
「……はい?」
「さあ、メテオの雨を二十連発だ。どこまで耐えるか見せてもらおうか」
俺は悪意に満ちた顔で笑うと、すべての杖を起動させた。




