第46話 意気投合
とにもかくにも、このまま勇者達のもとへ行くことになった。
黒魔導士は魔術で分身を用意する。
本体は屋敷に待機して、分身と俺だけが現地へ飛ぶ作戦だ。
こちらは残機制ではないため、黒魔導士は一度でも死ねばそれで終わりであった。
俺のチート能力は自分だけが効果対象なのだ。
何気に不便な仕様である。
まあ、幸いにも黒魔導士の分身は高性能だ。
本人とリアルタイムでリンクしており、遠隔で操作できる。
基本的に普段と変わりなく行動が可能だった。
仮に戦闘で分身を破壊されても、本人にダメージのフィードバックはない。
また分身を生み出して派遣するだけなのでデメリットがなかった。
分身はゲーム内でも彼女が使う得意魔術である。
特定のイベントでしか黒魔導士を殺せない原因がこれだ。
基本的に敵として登場するのは分身体で、どれだけダメージを与えても意味がない。
撃退という扱いになってしまうのだった。
ゲームではあまりにも厄介だった仕様だったが、味方になった今では非常に心強い。
したがって黒魔導士は実質的に不死身だった。
彼女の屋敷は他人がワープできないように結界が張られている。
俺のチートは例外だったが、あれだけ簡単に辿り着くことができない。
おかげで本人が襲撃される危険性を切り捨てて、勇者パーティーを相手に何度でも特攻を仕掛けられる。
「どうっすか。あたしも優秀っすよね?」
分身の隣に立つ黒魔導士は、その肩を叩きながら誇らしげに言う。
俺は拍手をして褒めた。
「頼もしいよ。これで勇者達にひと泡吹かせられるはずだ」
「それは楽しみっすね。やってやりましょうよ」
二人で意気投合してハイタッチを決める。
ゲーム版の黒魔導士はそこまで好きなキャラではなかったが、こうして話してみると面白いくらいに気が合う。
利害が一致して協力的なのが大きいとは思うものの、普通に仲良くなれそうだった。
その後、俺と黒魔導士の分身は移動する。
シナリオチャートの進行具合で大まかな現在地は分かる。
黒魔導士は魔術によるワープだが、問題なく付いてきてくれた。
着いた先は、平凡な街であった。
中規模で各エリアへの中継地点という扱いだ。
(おそらくは休息でも取っているのだろう)
俺と敵対してから戦闘続きだった。
まともに気が休まる時間がなかったはずだ。
賢者の加入によって生まれた余裕で心身の回復に努めているに違いない。
そこを容赦なく叩かせてもらおうと思う。
この世界に安息の地など存在しないことを心に刻んでもらわなくては。




