第45話 いざ勇者のもとへ
黒魔導士は、俺の分の紅茶までがぶ飲みしながら話題を変える。
「ところで、これからどうします? さっそく勇者パーティーに攻撃してみます?」
「いいアイデアだな。そうしよう」
「マジっすか。行動派っすね」
意外そうな顔をされた。
黒魔導士は冗談のつもりで言ったらしい。
まさか本当に今から動き出すとは思わなかったのだろう。
俺は賢者に惨敗し、まんまと逃げられる結果となってしまった。
仲間が増えたとはいえ、再び挑むには早すぎる。
しかし、別にリスクは低いのだ。
何をされようと俺は死なない。
詰みの状況は存在するものの、脱するだけの備えはある。
つまり予想される苦痛さえ耐えれば、何も恐れることはなかった。
即死魔術はあまり何度も受けたいものではないので、あれは我慢するしかないだろう。
痛みに怯えて逃げ出すのなら、最初からこんなことをしなければいいのだから。
(それに偵察は必要だ。今後の方針にも関わってくる)
シナリオチャートで勇者達の行動は把握しているが、そこまで精密なものではない。
やはり実際に目で見て確認しておきたいところだった。
賢者が加わって予測不可能な面が増えてしまった。
彼女の魔術が加わると、攻略上の難所をスキップできる場合がある。
非常に厄介だ。
仮に抹殺したところで残機が一つ減るだけだった。
既にパーティーに加入した判定となっており、大した損害にはならない。
ただの嫌がらせレベルの行動だ。
(もし戦闘になるなら徹底的に全滅を狙うしかないな)
残機が五つ減るのは大きい。
賢者は蘇生魔術持ちで、加えて攻撃面でも即死魔術を駆使してくる。
勇者パーティーの中でも間違いなくトップの能力と言えよう。
ただ、俺はそこが弱点だと思っていた。
向こうは少なからず油断しているに違いない。
もし襲撃してきたとしても、即死魔術の連打で無力化できると考えている。
しかし俺も馬鹿じゃなかった。
何度も情けない真似を晒すつもりはない。
(見てろよ。チートの底力を披露してやる)
俺は不敵に笑う。
勇者達が知っているのは能力の一部に過ぎない。
まだまだできることはたくさんあるのだ。
たった一人の仲間が増えただけでなんとかできるはずがない。
舐めてもらっては困る。
協力関係になった黒魔導士にも、俺の力を見てもらう必要がある。
ここで信頼を獲得したい。
勇者パーティーを全滅させるのが最も手っ取り早いだろう。
俺に利用価値があるのだと思わせるのが先決だった。




