第41話 はじめまして
俺は竜酒を持って玄関に仁王立ちする。
そのまま何歩か進むも、攻撃されることはなかった。
「次から次へと素敵な出迎えだな。嬉しくて泣きそうだ」
俺は室内に待ち構える屋敷の主を見やる。
そこに立つのは、黒装束の少女だ。
紫色の髪に赤い目。
人間の骨で組み上げられた杖を持っている。
屋敷の主は腰に手を当てて、胡乱な表情でこちらを見ていた。
「只者じゃないっすね。何者っすか?」
「元勇者パーティーの傭兵ムカイだ。あなたに依頼をしたくてここまで来たんだ、黒魔導士さん」
屋敷の主は黒魔導士と呼ばれている。
禁術として知られる系統の力ばかりを研究し、それに特化した術者なのだ。
本人の性格も悪く、平気で人体実験を行うマッドサイエンティストな一面もあった。
当然、人々からは忌み嫌われている。
地域によっては魔王を超える脅威として認知されているほどだ。
それがこの世界の黒魔導士であった。
「あたしに依頼をしたい? どういうことっすかね」
「勇者パーティーの殺害を手伝ってほしいんだ。少し面倒な事態になっていてね。俺だけでやり遂げるのが難しくなってしまった」
俺は黒魔導士に事情を説明する。
勇者パーティーに追放されたこと。
彼らに報復したいことや、女神の祝福である残機をゼロにするという目的を大雑把に伝える。
真面目に聞いていた黒魔導士は、呆れた顔で鼻を鳴らす。
「なんというか、性格悪いっすね。よく言われません?」
「否定はできないな。自覚している。俺がやっていることは、陰湿な嫌がらせだ」
「陰湿な嫌がらせには加担できないっすね。そんな茶番のためにここまで来るなんて、相当な暇人っすか。竜酒だけ置いて帰ってくださいよ」
黒魔導士が手を伸ばしてくる。
俺はひょいと避けて下がり、紙一重で竜酒が奪われることを阻止した。
(まったく相手にされていない。だけど大丈夫だ)
このままだと追い返されそうだが、攻略法は知っている。
俺には魔法の言葉があるのだ。
それを自信満々に告げる。
「勇者パーティーに賢者が加入した。あいつも殺したいんだ」
「お任せください。あたしでよければ依頼を受けるっすよ」
態度を一変させた黒魔導士は、ぎらぎらとした目で即答した。
握られた骨の杖が軋む。
よほどの力が込められているのだろう。
黒魔導士の顔は怒りと喜びに震えていた。
そのまま乗り気になって屋敷内へと招いてくれた。
作戦の成功を確信した俺は、ほくそ笑む。




