第34話 ひっさつわざ
(まあ、いいか。皆殺しにしてやるよ)
思わぬ欠点が発覚したものの、別に支障はない。
むしろ勇者達を褒め称えるべきだろう。
無意識とはいえ、この状況で活路を見い出したのだ。
その努力にこそ価値がある。
俺が一方的に有利ではつまらない。
これくらいのトラブルはあって然るべきだろう。
賢者の登場も含めて、非常に面白い展開となっている。
追い詰められるくらいがちょうどいいのだ。
(さあ、ここからどうする?)
俺は期待しながら彼らの動きを見守る。
早くこちらの予想を超えてきてほしいのものだ。
勇者は賢者を一瞥すると、絶え間なく聖剣を動かしながら尋ねた。
「あなたが賢者ですか」
「いかにも。我が術で葬りたいのはその男じゃな?」
賢者が杖で俺を指し示す。
見た目は二十代だが、不老の魔術で若さを保っているのだ。
古風な喋り口調はそのためだった。
勇者は油断なく斬首を続けながら説明する。
「傭兵ムカイは決して死なず、どんな状態からでも一瞬で再生できます。現状、こうして首を切り落とし続けるしかないのです」
「厄介な異能じゃな。理外の力を宿しているのか」
「正解。ヒントも。ないのに。よく。分かったな」
俺は首を切断されながら称賛する。
理外の力とは、すなわちチートのことだろう。
世界の法則に逆らう不思議パワーである。
厳密にはゲームという規格に押し込んで能力だが、まあ細かいことはどうでもいい。
賢者は異世界でも豊富な知識を持っている。
まだ会って間もないのに、俺のチート能力を看破したのだった。
その名に恥じない観察眼である。
自信に満ちたその姿は、既に完膚なきまでの勝利を確信していた。
賢者は杖を構えながら只ならぬ顔で宣言する。
「我が来たからにはもう安心じゃ。すぐに処分してみせようぞ」
「やって。みろよ」
「お主の時をここで止める……ッ!」
賢者の杖から衝撃波が放たれた。
それは圧縮されながら進み、正確に俺だけに命中する。
刹那、空気が凍り付いたかのような感覚に陥った。
思考が鈍って一切の行動が取れなくなる。
指先さ能動的に動かそうと気分になれなかったし、物理的にもまったく動かない。
(さっそくこの術か)
それは賢者の扱う技の中でも強い部類だった。
5ターンもの間、相手の行動を封じる衝撃波だ。
一方的に攻撃できる反則スキルである。
おまけに技自体が必中なので、外して無駄にすることはない。
たとえばボス戦で炸裂すれば、難易度が一気に低下する。
それだけの効果を秘めているのだ。
基本的にどの局面でも役に立つ。
もっとも、チート持ちである俺には通用しない
データ改竄で行動不能の状態異常を打ち消すと、首から下を再生させながら不敵に笑った。
「おいおい、これで終わりか? もっと見せてくれよ」




