第33話 逸脱ルート
(どうしてここにいる?)
俺はシナリオチャートを大まかに記憶している。
大きな戦力となる賢者の登場パターンは把握済みだった。
少なくとも現段階で現れるフラグは立っていないはずである。
ただ、俺と勇者が膠着状態に陥ってから五日が経過している。
強引に話を進めれば、賢者と出会うことも可能だった。
もっとも、かなり難しいルートなので錬金術師が一人で死なずに進行するのは不可能に近い。
しかし、実際に賢者は錬金術師が連れてきた。
これは疑いようもなかった。
何らかの手段で仲間に引き込んだのだ。
そう思って俺は、脳内のシナリオチャートを確認する。
すると見知らぬチャートが発生していた。
そこから最短ルートで賢者を仲間にしているのだ。
チャート内容を読むと、錬金術師は近くの酒場にいた賢者と偶然にも出会った。
そこで勇者を助けてほしいと懇願したのだという。
賢者は力を貸す条件として、錬金術師の寿命半分を要求。
錬金術師は快諾し、そうしてここまで戻ってきたらしい。
チャートを辿ると、俺が薬師の小屋にいる最中に賢者の噂を聞いていた。
実はその時点で遭遇フラグが立っていたのだ。
勇者達は、いざという時のために賢者の捜索と勧誘を視野に入れていたようだ。
(こんなシナリオは知らない。本来、ゲームには存在しなかったはずだ)
そもそも、勇者パーティーが別行動するなんてありえない。
ゲームと異世界による差異が、俺の把握できない現象を引き起こしているとしか思えなかった。
(まったく、厄介なことになってきたな)
俺はこの世界をゲームと解釈している。
だからシステムに関連する改竄や認識能力を取得していた。
それらを逆手に取ったことができるようになっている。
一方で勇者達は、この世界はゲームではないと考える。
だからゲーム由来のチートを部分的に無視できるのだった。
意識の差が結果を歪めているのである。
ここで俺は、大きな勘違いをしていることに気付いた。
防御能力を上げまくったのに普通に斬られてしまうのは、何も聖剣の特殊効果だけではない。
ステータスという概念を勇者達が認識していないせいではないか。
俺の行う攻撃には適用されているので、完全に無効化されているわけではない。
ただ、部分的に効かないのは間違いなかった。
生身の俺を斬れないはずがない。
その意識が、俺の持つシステム的な防御力を貫通しているのだろう。




