第31話 対策
(よく考えたな。だいぶイカれた作戦だと思うが)
俺は生首のまま勇者を眺める。
こちらの心が折れるまで首を斬ると宣言したが、冗談で言っている雰囲気ではなかった。
この男は本気だ。
何が何でもやり遂げるという気概を纏っている。
確かに理論上は可能だろう。
状況的に勇者が有利だと思う。
彼は意図していないのだろうが、今の俺は座標改竄による瞬間移動が使えなかった。
この状況が戦闘中という判定になるからだ。
座標改竄はどういった形でもいいので戦いが終わせないと使えない。
チートにも限界がある。
抜けられないシステム上の壁が立ちはだかっているのだ。
この辺りはゲームの仕様なので仕方がない。
つまり俺は、瞬間移動を除いた別の手段でどうにかしなくてはならなかった。
もちろん首から下が必要な行動はすべて却下される。
何かする前に勇者が斬首するので意味がない。
(いやー、困ったな。どうしようか)
俺は呑気に考えながら連続で再生する。
勇者は気迫を以て聖剣を動かして、見事な動きで胴体を切り離し続ける。
気の緩みは微塵も見られない。
最高の集中力を恐るべき執念で持続させていた。
あと一時間でも二時間でも同じ調子を保っていそうである。
(気が狂いそうなのに、よくもやり遂げようと考えたな)
勇者のアイデアには純粋に尊敬する。
半端な人間がやればただの愚行だろう。
それなのにこの男は全力で打ち込んでいる。
すべては仲間のため――さらには世界を救うためであった。
まるで魔王と対峙しているかのような覚悟だった。
生憎と冒険は序盤で、刃を向けているのはかつての仲間だが。
確かにゲーム版にムカイという名の傭兵はいない。
追放された途端に殺しにかかってくるような悪質なキャラはいなかった。
とにかく、勇者の対応力は称賛すべきものと言えよう。
この時点で、俺は何らかの対策をすることを断念した。
別にやろうと思えば手段はある。
しかし、下手なやり方で勇者の努力を台無しにするのは野暮かと思ったのだ。
どうせなら彼の心を折ってみたい。
向こうもそれを狙っているのだから、俺がやり返したところで何ら問題はないはずだ。
むしろそれで対抗するのが礼儀だろう。
(そうと決まれば、さっそく最高の展開を考えなくちゃいけないな)
連続で首を斬られながらも、俺はウキウキとした気分だった。
怪訝そうな勇者が面白い。
悪巧みをする俺に嫌な予感を覚えているに違いない。
しかし、彼はどれだけ不安になっても聖剣で攻撃しないといけなかった。
生首になって動けない俺だが、それは勇者も同じことだった。




