第30話 生首フィーバー
(よく考えたものだ。圧倒的に不利だというのに)
そのアイデアを評価しながら再生するも、構えていた勇者が聖剣を一閃した。
俺はコンマ数秒で生首に逆戻りする。
試しに再生ペースを上げてみるが、なんと勇者は付いてきた。
見事な腕前で首を輪切りにし続ける。
量産される首なしの死体は、再生で新たな肉体ができた時点で消える。
だからその場に積み上がることはない。
もし死体が残る仕様なら、かなりスプラッターなことになっていたのではないか。
自分の死体が山になった光景を想像しながら、俺は次々と再生させていく。
「ほれほれ」
俺は挑発するように笑う。
ポーズなんかも付けられれば良いのだが、一瞬で切り離されるのでそれは叶わなかった。
勇者は悔しそうな顔をしている。
言い返す余裕もなく、聖剣を動かし続けていた。
ただ無駄のない動きで俺を生首状態でキープする。
彼からすれば命がけの行動なのだ。
ちょっとでもタイミングを誤ると即死なのだから。
再生した手足に触れられるだけで爆殺されることは分かっているはずだ。
そんなギャンブルをこいつは既に何十回も成功させていた。
まさに天才の所業と言えよう。
しかし、何事にも限界というものがある。
緻密な攻撃は疲労の蓄積を促し、精神を削いでいく。
終わりが見えない点も大きい。
俺を一方的に斬る立場にありながら、勇者は追い詰められていた。
「くっ……」
「どうした。動きが。雑に。なって。るぜ?」
俺はニヤニヤしながら煽る。
喋りながら首を斬られるせいで、こまめに言葉が途切れてしまう。
ちょっとみっともない気がした。
加えて息の詰まるような感覚は鬱陶しいし、切断のたびに首は痛む。
ただ、目の前で苦悩する勇者を眺めていられるのは悪くなかった。
(そういえば錬金術師がいないな。逃したのか?)
俺は目玉だけを動かして周りを見ようとする。
近くには誰もいないようなので、勇者は時間稼ぎをしているのだろう。
ここで二人とも殺されて全滅するのは避けたいのだと思う。
「おい。何か。秘策は。あるのか。いつまでも。このままじゃ。無理。だろ」
「……黙れ。もう、あなたの話には耳を貸さない」
勇者は汗水を垂らしながら聖剣を振るう。
たまに再生のテンポをずらしてみるが、あまり効果はなかった。
極限の集中力を以て予兆を観察されている。
「このままあなたの首を断ち続ける。いくら不死身でも苦痛は感じるはずだ。心が折れるまで繰り返してやる」
勇者は噛み締めるように呟く。
その目には、強靭な執念が宿りつつあった。




