第23話 台無し
ほどなくして俺は山にワープした。
秘境にそびえ立つ黒い山だ。
ここで薬師が研究をしており、蘇生薬の発明に挑戦している。
ただし、完成には山の頂上に君臨する魔物の素材が必要だった。
その素材を提供すると、蘇生薬が出来上がるのだ。
勇者達はこの黒い山を目指して移動している頃だろう。
ちなみにゲームだと、以降は無料で蘇生薬を提供してもらえるようになる。
最大で二つまでしか持てないものの、鬼畜難度の『ファンタジック・スリル3』においては必需品だった。
このサブシナリオをクリアしないと、ただでさえ厳しい攻略がさらに難しくなるのだ。
全滅前提の罠も決して珍しくなくなってくる。
世界には勇者を殺すトラップが腐るほど仕掛けられていた。
そんなわけで、俺は蘇生薬の供給ルートを潰しておくことにした。
ゲームクリアが遠のくのは大歓迎だ。
あわよくば俺が何もせずとも勇者達が全滅してくれる状況がありがたい。
薬師の小屋を訪れた俺は、蹴りで扉を開けた。
その音にも気付かず、薄汚れた白衣を着た老人が熱心に作業をしている。
彼が薬師だ。
厄介な蘇生薬の作り手である。
俺は片手を上げて挨拶をした。
「どうも、死んでください」
言いながら拳銃を連射する。
薬師は無防備に弾丸を受けて、椅子からひっくり返って倒れた。
驚いた顔で、撃たれた胸と俺の顔を交互に見やる。
俺はそこに近寄りながら残りの弾を撃ち尽くした。
一発ごとに肉体を破壊する音がした。
別に躊躇いはない。
これが生き残る道なのだから、俺は全力を尽くす。
ただそれだけの話である。
倒れた薬師は、胴体が血塗れになっていた。
頭部や首にも被弾しており、見開かれた目は虚空を見つめている。
蘇生薬を作れるほどの天才でも、ただの鉛玉で死ぬようだ。
「よし。殺害完了っと」
俺は横になった椅子を戻してそこに座ると、机に拳銃を置いた。
何気に発砲の反動が強いので手が痺れるのだ。
まあ、薬師の痛みに比べれば屁のようなものである。
これで正規の手段では蘇生薬が手に入らなくなった。
勇者と錬金術師いずれこの小屋まで来るだろう。
きっと彼らは諦めず、徒労に追われながら絶望するはずに違いない。
「さて、どんな風に迎えてやろうかね……」
俺は抑え切れない笑みを洩らしながら思案する。
そうして死体となった薬師を肩に担いで運ぶのだった。




