第20話 大事故
気の狂いそうな激痛が走る。
脳味噌を掻き混ぜられるような感覚だ。
いや、実際に掻き混ぜられているのだった。
聖剣は額に沈み込んでいた。
俺は血の涙を流しながら勇者を見て笑う。
「ぉあっ?」
思考が鈍り、ハンドル操作が疎かとなった。
リムジンが横にそれて勇者に接触する。
勇者は俺の額から聖剣を引き抜いて、ひょいと跳んで車の上に移った。
錬金術師を抱えながら姿を消してしまったのだから、相変わらず卓越した身のこなしである。
「おあお、ああっ……」
俺は皮肉を言おうとするも、舌が上手く回らなかった。
とりあえず肉体を無傷の状態に復元する。
拳銃を頭上に向かって発砲した。
勇者がいそうな場所を狙って撃ち込んでいく。
同時に金属音が連続する。
ここからでは見えないが、勇者は聖剣でガードしたようだ。
お返しと言わんばかりに聖剣の刃が天井から飛び出した。
まるで紙のように天井を切り裂きながら、背後から運転席の俺に向かって突進してくる。
そのまま俺の頭部を真っ二つにしてしまった。
視界が左右に離れていく様を認めつつ、俺は急ブレーキを踏む。
リムジンが悲鳴を上げて減速し始める。
刹那、何かが破裂する音がした。
途端にハンドルが利かなくなったのは、たぶん勇者がタイヤを切り裂いたからだろう。
さらに背後で凄まじい切断音がした。
振り返ると、リムジンのあちこちに亀裂が入っている。
そこから火花を立てながら分離していく。
切り崩された車体が、猛スピードのまま派手にクラッシュした。




