第129話 リスタート
気が付くと俺は、見知らぬ街にいた。
どこか古めかしい外観だ。
メインストリートを歩く人々の服装も、歴史の教科書で見かけそうなものが多い。
よく見れば明らかに人間ではなさそうなビジュアルの者もいた。
まるでハロウィンの仮想や特殊メイクである。
しかし、この場を取り巻く現実感がどうしようもなく伝わってきた。
ただのお遊び的なイベントでないのは直感的に理解できた。
「参ったな。異世界転移ってやつかね」
ひとまず道の端に避難した俺は、行き交う人々を眺めながら悟る。
とんでもない事態だが意外と冷静だった。
あまりにも突拍子がないので、頭が追い付いていないのかもしれない。
俺はとりあえず自分の服装や荷物を確認する。
なぜかこの世界にマッチした布の服になっており、これといった荷物は一切ない。
丸腰で異世界を冒険しろということだろうか。
こういったファンタジーな舞台は、現代日本より治安が悪い場合が多い。
今の状態で徘徊するのはあまりに危険な気がする。
どうしたものかと考えているうちに、俺は一つの発見をした。
意識を集中させると脳裏にステータス画面が表示される。
そこでどうやら自分の能力値を弄れるらしいのだ。
(ゲーム的な法則がある異世界なんだなぁ)
なんだか既視感のあるレイアウトと項目をひとまずスルーし、レベル1の初期値である能力値をどんどん強化した。
平均的な数値が不明だが、とりあえずカンストさせておく。
これで肉体面は最強になった。
ついでにHPの設定も改竄し、どんなダメージでも0にならないように細工を施す。
異世界系の作品だと、主人公がチート能力を獲得することが多い。
俺もその事例に従った形になった。
正直、途方に暮れそうだったので助かったのが本音である。
我ながら異世界で生きていけるような人間ではない。
根性と性格の悪さには自信があるものの、技能面で役立つことはないだろう。
能力値をカンストさせたことで、命の危機に陥る心配はなくなったはずだ。
それだけで行動の自由度は抜群に広がる。
(まずは情報を集めるか)
準備を済ませた俺は雑踏に紛れて歩き出す。
どうしてこんな世界にいるか分からない。
目的が決まるまでは、気ままに散策してみようと思う。
きっと何か進むための出来事があるだろう。
なぜか俺は確信していた。




