第128話 目的意識
「さて、ゲームを始める準備をするか」
俺は独り言を口にしながら決心する。
別に不安は恐怖はない。
既に三シリーズをゲームオーバーにした実績があるのだ。
過剰にネガティブになることはないだろう。
十シリーズ規模の進捗で言えば序盤に過ぎない。
それでもノウハウは学んでいるし、シリーズ全作をプレイ済みの俺は圧倒的に有利だった。
(シナリオチャートだって見えているしな)
俺は脳裏に展開されたそれを確認する。
時系列的に過去の方向へ三十秒ほどスクロールしていくと、3の頃の勇者との決戦時のシナリオが見つかった。
やはりあの時から地続きの世界になっているようだ。
あの時代からちょうど百年が経過していた。
いくつかの勢力が滅びかけた世界で稼働し、急速に文明発展を進めたらしい。
詳細は不明だが、心当たりのある組織はいくつかある。
一度は死んだ俺も、新シリーズの開始に伴って復活した。
ゲームクリアで世界が消えない限り、シリーズが変わるタイミングで蘇る仕様になっているらしい。
もちろん自殺した時にそんなことは知らなかったので、なんとも微妙な心境である。
死にたくなったのは事実だった。
ただ、こうして蘇ってみると、まだ頑張ろうという気になっている。
何もしなければゲームクリアで世界は消滅して、自殺も成功する。
それでも現在の俺は妨害する気が満々だった。
(今回の主人公は勇者の末裔だ。つまりあいつの子孫ってことだが……)
俺は部屋の中を歩き回りながら考える。
『ファンタジック・スリル』シリーズは一貫して残機制を採用している。
だから今回も勇者パーティーの残機をゼロにするのが目的だった。
3では失敗して厄介なことになってしまった。
初代と2では順当に削り切ったようなので、前回は反省点が多かったと言える。
この部屋を出ると、一部の記憶が封じられるが、根付いた目的意識や方針は無意識レベルに受け継がれる。
だからこうして作戦を練るのは無駄ではなかった。
同じ失敗を繰り返さないようにしなければいけない。
とりあえず過度に追い詰めるのは駄目だ。
勇者の末裔ならば、限界を超えて強くなる恐れがあった。
土壇場で強くなれるのは主人公の特権である。
システムすらも超えた力を発揮するため、決して油断できない相手だった。
とにかく、早期に残機を削りまくるのが先決だろう。
序盤で半分を切らせるのが理想である。
あとは残機を回復できるイベントを潰すだけで自滅を狙うことができる。
俺はワクワクしながら今後の予定や作戦を練る。
やがて窓の外から夕日が差し込んできた頃、俺はスタート地点の部屋を出るのだった。
ここからまた始まるのだ。




