第127話 歴代世界
外箱を目にした瞬間、俺は脳の奥底に封じられていた記憶を思い出す。
勇者パーティーと旅を始める以前、俺は初代『ファンタジック・スリル』と『ファンタジック・スリル2』を基にした世界も経験してた。
それぞれの時代でも本来のシナリオを妨害し、歴代の主人公を抹殺してゲームオーバーに追い込んだのである。
そうすることで俺は生き延びて世界を存続してきた。
この部屋はゲームオーバー直後に連れて来られる準備部屋みたいなものだった。
どうやら歴代シリーズの記憶は部屋にいる間のみ維持されるらしい。
部屋を出ると、新たなシリーズが始まって記憶が消されてしまう。
まるで過去作の経験を活かせないような仕様となっていた。
(ゲームがクリアになったら世界が消える。俺はなぜか知っているんだ)
強迫観念に近い感情だが、不思議と俺は確信していた。
だから執拗に邪魔をして世界を繋げてきた。
そうすることで自分と世界の死を回避している。
一体、なぜ俺がこんなことをしているのか。
根源的な疑問が生じるも、生憎と明確な答えは持っていない。
誰かに頼まれたのかもしれないが、今の俺には異世界転移直後の記憶が無かった。
まだ眠っている過去があるのかもしれない。
ただしそれを手に入れる術は不明だ。
現状、どうすることもできなかった。
とにかく分かっているのはルールのみである。
シナリオをゲームオーバーに追い込むことで主人公をクリアをさせない。
そうしてクリア後の空白を潰し、次のシリーズへと繋げていく。
実にシンプルな話だ。
「変な使命を背負っちまったなぁ……」
俺はベッドに腰かけて苦笑する。
次々と蘇る記憶の数々に驚いてしまったが、現実として受け止めると気楽なものである。
やることは一貫しており、道を誤ることはない。
システムを改竄するチート能力も続投しているため、特に困ることは無いだろう。
俺はこのまま4以降もやるつもりでいた。
ガラスケースの謎も解消した。
全部で十個。
そのうち三つにゲームオーバー済みのシリーズの外箱が入っている。
つまりこれは俺が世界を救わねばならない回数だ。
シリーズ最新作は『ファンタジック・スリル10』なので符合する。
すなわちあと七回は同じことをしなければならなかった。
外箱をコンプリートした時に何か起こるか分からない。
それでもやらねば前に進めない。
とにかくそんな責務を課せられているのが、現在の俺なのであった。




