第124話 自業自得の決意
(意味なんてないんだ。どうせすべて死ぬんだから)
俺は力無く笑う。
その振動だけで腹の痛みが増した。
流れ出る血の勢いが衰え始めているのは、体内の血液がそれほど残っていないからだ。
俺は自らの死期を悟った。
どうやらこの身体のダメージは治せないらしい。
回復薬もチートによる再生も効果がなかった。
脳裏に浮かぶステータスは、だんだんとHPが減少している。
システム改竄でHPが0にならないように細工しているが、おそらく機能していないだろう。
それを感覚的に理解した。
俺は隣に転がる死体を一瞥する。
「……やってくれたよな。さすがは英雄様だ」
傷が治らないのは、勇者から受けた攻撃が原因だろう。
バグ状態のダメージが仕様を無視して、現在も尾を引いている状態なのだ。
このままだと俺は失血死する。
世界中のどこに行っても、これを治す術は見つからないだろう。
そもそも世界は滅亡寸前である。
他でもない俺達が破壊し尽くしたのだ。
僅かな生き残りは、辺境の地で必死に暮らしている。
文明が潰えた場所も多く、魔物との生存競争に忙しいはずだった。
仮に俺が縋り付いたところで、彼らは何もできない。
むしろ俺を殺してその肉を食らうのではないか。
すべては自業自得。
俺は好き勝手に暴走し、今からその代償を払うだけだ。
何もおかしなことはない。
「あーあ、もう面倒くせぇな」
ぼやく俺は手元の拳銃を改竄する。
新品に変えて勇者に撃った分の弾を補充した。
しっかり装填されていることを確かめると、銃口を側頭部に当ててずれないように構える。
指は引き金にかけていつでも発砲できるようにした。
その姿勢で視線を勇者の死体に向ける。
血塗れで額に穴が開いていることを除けば、実に穏やかな表情だった。
まるで眠っているかのようである。
俺はその顔立ちを注視して、どうにもならない嫌悪感を覚える。
自然と引き金に力がかかった。
(クソッタレだよなぁ。異世界の勇者が若い頃の俺と瓜二つなんて――)
耳元で銃声が鳴り響いた。
放たれた弾が頭部を突き抜ける感触。
痛みより気持ち悪さが先行し、視界が暗転する。
四肢の力が抜けて俺は転倒した。
脳裏に浮かぶHPの表記が0になり、その事実を冷静に受け止める。
不安も恐怖も何もない。
俺の意識は、深い闇へと沈んでいった。




