第118話 復活
俺は魔王剣を下ろす。
そして成果を実感した。
勇者は死んだ。
残機を使って復活したので、死体が消えたのである。
こればかりは間違いない。
どんな裏技でも誤魔化せない現象だった。
俺は咳き込んで血を吐きながら視線を彼方に向ける。
そこは瓦礫地帯で、かつての街の残骸があった。
住民は死に絶えて荒野の一部と化している。
そこから気配がした。
やがて中央付近の瓦礫が動いて、横にずれて転がる。
空いた箇所から這い上がってくる人影があった。
それは勇者だ。
先ほどまでの傷は綺麗に消えた状態だ。
彼は土埃を纏った姿で瓦礫地帯を歩いてくる。
(あそこでセーブしていたのか)
瓦礫の下には、おそらく教会の残骸があるのだろう。
街は滅んでしまったが、復活地点としての機能はまだ生きていたらしい。
そこまで考察したところで俺は気付く。
こちらにやって来るのは勇者一人だ。
他のパーティーメンバー、いつまで経っても蘇ってこない。
事情を察した俺は微笑む。
(なるほどなぁ。ついに決断したか)
やがて勇者が俺のもとまで戻ってくる。
傷は癒えたようだが、顔色がかなり悪かった。
今にも吐きそうなほどに青くなっている。
俺はそんな彼に優しく話しかけた。
「一つ忠告してやるよ。中途半端に往復していると、何もかも失うことになる。初志貫徹って言葉を胸に刻むといい」
返事はない。
勇者は唇を噛んで俯くばかりだった。
何も言い返せないのだろう。
俺の意見が正しいのだとよく分かっている。
そして自らの愚かさを痛感しているに違いなかった。
勇者が中途半端だからこそ、この結果になった。
俺は追い込むように淡々と指摘を加える。
「加護の設定を変えただろ。それで自分だけが復活できるようにしているな?」
「…………」
「別に答えなくても構わないさ。仕組みは知っている」
それは勇者の特権だった。
全滅時、復活するメンバーを選択できるのだ。
デフォルトは全員になっているが、勇者だけを生き返らせることも可能である。
勇者単独でのクリアは、ゲーム時代の縛りプレイとしても有名だった。
勇者は土壇場でその権利を行使したのだろう。
そして五人全員で復活するのではなく、自分だけを選択したのである。
だから彼は一人ぼっちで生き返ってしまった。




