第100話 無意味な問答
女戦士は今にも飛び出しそうだった。
彼女はパーティー内で最も気が短く喧嘩っ早い。
ついに我慢できなくなったらしい。
しかし、寸前でそれを勇者が制する。
彼は表情を変えずに意見を述べた。
「ムカイ。あなたの言葉に耳を貸すつもりはない。何の気持ちもこもっていないからだ」
「おっ、バレたか。よく見破ったな」
「あなたには信念が感じられない。どこまでも他人事でふざけている」
勇者は冷淡に言い放つ。
そこには少なくない嫌悪感が滲んでいた。
他のパーティーメンバーも同じような雰囲気だ。
よほど嫌われているらしい。
まあ、別にそれは分かっていたことだ。
俺は足手まといとしてパーティーから追い出されたが、それ抜きでも好かれてはいなかった。
こいつらは勇者を囲うハーレムチームでいたい。
そこで俺は邪魔な存在でしかなかった。
不愉快な奴が不愉快なことをしているから、尚更に憎らしいのだろう。
(信念なぁ……)
俺は勇者の言葉を反芻する。
確かに英雄的な気質は持ち合わせていないし、勇者パーティーへの嫌がらせを楽しんでいる。
とは言え、まったく無意味な妨害行為でもなかった。
「俺だって色々考えているんだがね。勇者様が消そうとする世界の救い方とか」
「……また戯れ言か」
「どうせ理解できないんだ。真剣に捉えないでくれ」
手を振って話を流す。
勇者が魔王を殺すとゲームがクリアとなり、世界が消えてしまうかもしれないなんて伝わらない。
どうせいつもの冗談として無視されるに決まっている。
もちろん、世界消滅は俺の推測だ。
クリア後のシナリオチャートが存在しないことからそう解釈しただけに過ぎない。
消滅せずに平和が訪れる可能性だってある。
ただ、別に勇者達を殺したところで損するわけではないのだ。
ここで始末するのが確実であろう。
(そもそも、魔王がいなくなっても平穏なんて来ないだろうからな)
俺は荒廃した周囲の景色を一瞥する。
世界全土を巻き込んだ経験値稼ぎにより、秩序と文明は崩壊した。
人口もこの二週間で大幅に減った。
集計を取ったわけではないが、俺達三人と勇者パーティーによって世界の九割以上の命が潰えたのではないか。
そこにはモンスターや魔族といった人外も含まれている。
とにかくひたすら殺しまくった。
ここにいる面々は揃って大犯罪者だ。
魔王の死後も安息の日々を送るのは難しい。
(まあ、俺なんかは外見データを弄るだけで済むんだがね)
気楽に考えながら拳銃を構える。
引き金に指をかけていつでも発砲できるようにした。
その姿勢で勇者パーティーに告げる。
「お互いにやることは決まっている。そうだろう?」




