表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/61

三度目の異世界

 24時間前、俺たちには衝撃的な出来事があった。

 なぜか俺たちは関口に呼び出された。

 関口の車で運ばれた先は再開発地区のビルのテナント。

 そこは弁護士事務所だった。

 広いわ……。

 なぜか弁護士数人がエレベーターの前で待ち、俺たちにまで深々と頭を下げる。


「そちら様が……」


「ああ、俺の相続人たちだ」


「ちょ、なに言ってんの!」


 珍しく俺とハヤトの声がハモった。


「用件を言わねえと思ったら! おっさんなに考えてるんだよ!」


 放っておくとこれだよ!

 もうね!


「あのなあ、生存確率を考えろ。俺はおっさんで戦闘職じゃない。お前らが生き残る確率が高い」


「じゃあ四宮にあげりゃあいいじゃん!」


「断られた。その失敗をふまえて、情報を伏せて連れてきた」


 アホだ。アホである。

 なに考えてんのこのおっさん!


「先生、こいつら二人が我が弟子です」


「そうですか……陶芸のお弟子さんかな?」


 弁護士の声がわざとらしい。

 もう察しているのだろう。

 俺たちがアサシンとバーサーカーであるということを。


「こいつらがアサシンとバーサーカーですよ。先生」


「ちょ、おっさん!」


 でも声に出してしまうのは違う!

 情報を確定しちゃうのはダメなのだ!


「大丈夫だ。守秘義務を結んでいる。それに先生とは昔からの知り合いだ。信用できる」


 弁護士は深くため息をついた。

 いきなり機密を教えられても困るだろう。


「……そうですか。わかりました」


 その後、いくつかの書類にサインして判子を押して解放される。

 とんでもないことになってしまった。

 おっさん……死亡フラグ立てるの本当にやめろ。

 こうして俺たちは関口の莫大な財産を相続することに。

 絶対に関口のおっさん生かして帰ろう。


 48時間後。

 三度目の異世界はあの部屋から始まることはなかった。

 俺は日本から装備を持ってくることができた。

 剣はゴブリンから奪った剣ではなく、真穂の打った剣。

 槍もナイフも真穂製。

 普通に考えれば現代の技術だから古の名刀や伝説級のものには負ける。(というか伝説クラスの装備を持ったことがないからわからない)

 だけどキャンプの支給品やモンスターから奪った武器よりも数段上だ。

 だって試し切りが外国車だもの。

 斬撃がフレームを切り裂き、突きがエンジンまで到達した。たぶん強い。

 ミッドガルドの盾なら斬れるかもしれない。

 ハヤトも同じ。

 真穂が作ったメイスにクソ重い超硬合金製の盾。

 グラム換算だと一番の高級品だ。

 俺たちの装備は防刃繊維パーカーにジャージ。アラミド繊維でステンレス板入り脚絆。日本と同じだ。

 手は薄い耐切創グローブ。ナックルガード付き。腕にはアーチェリー用のアームガード。

 靴は安全靴。

 能面はなし。

 軽さと即死回避のための装備だ。

 ハヤトだけは上からステンレス板入りの防刃ジャケットを着ている。

 ハヤトの場合は多少重量が増えても動きは変わらないそうである。

 俺の弓はアメリカ製のハンティング用コンパウンドボウ。カーボンファイバー製で軽くて強い。

 矢もアメリカ製。軽くて強い。射程距離も増加している。

 こちらの木製矢はどうしても精度にばらつきがあるのだ。

 レンジャーの片岡夫も同じ弓を使っている。

 お値段40万円なり。

 弓ってミッドガルドでも高級品だったもんね。


 関口たちも武装していた。

 関口たちも俺とほぼ同じ。

 ただ真穂が打った日本刀装備。

 真穂の腕が異次元にまで到達してる件。

 四宮だけは海外警察の横流し品で固めている。

 武器はもちろん刀。

 片岡愛理も同じ装備に小太刀を装備。

 非戦闘員は防刃加工されたツナギに小手と脚絆、さらに安全靴装備。

 さらにバイク用のヘルメットをつけている。

 武器は槍。

 非戦闘員と言えどもノルマをこなした人間だ。

 殺人の経験はなくともゴブリンは殺したことがある。

 そう言う意味じゃ安心できる。


 俺たちが出現したのは森の中だった。

 エルフの賢者の死体はない。

 どこかに埋まっているのかもしれない。

 咲良と楓もいた。

 死の危険があることは伝えてある。

 それでも二人は自ら来ることを望んだ。

 二人が何を考えているかはわからない。

 しばらく歩くと集落が見えてくる。

 テントが立ち並び、線の細い人々がいるのが見えた。

 殺気。それはわかっていた。

 俺は手を上げる。


「【誰だ!】」


 弓を構えるエルフが森から現れる。

 殺気ダダ漏れで、先制攻撃のチャンスをふいにした。

 仲間にすると考えると一抹の不安が残る。


「【エルフの賢者エステルの弟子にしてミッドガルド王に復讐を誓うもの。シュウと申す。(おさ)に取り次ぎ願えないか?】」


「【貴様勇者か! 我らを殺しにきたのか!】」


「【違う。俺たちはシステムに呼ばれた】」


 俺がそう言うとエルフの男は弓を下げミッドガルド標準語で話し始める。

 ハヤトが「音の精霊よ。翻訳せよ」と魔法を使う。

 ハヤトが初期状態で覚えていた翻訳魔法である。

 効果は一週間。便利である。ただしエルフ語は翻訳できない。

 なお俺はシーフの能力で最初からミッドガルド標準語は理解できた。

 何でもできるけど何もできないのがシーフの持ち味である。


「……わかった。長に聞いてくる。そこで待っててくれ」


 エルフがいなくなると関口がぼやいた。


「判断力がない。ダンジョンにつれて行ったら半日で死ぬな」


 それを聞いて咲良が笑う。


「あはははは。関口さん厳しい」


 それを聞いてハヤトが低い声を出す。


「いや単に事実の列挙だ。シュウみたいにすぐに殺す判断ができるやつじゃないと生き残れない」


「……ごめん」


 咲良はばつが悪そうにしていた。

 それは楓も同じだった。

 ハヤトはあくまで感情こめずに言う。


「謝ることじゃない。俺たちのいた環境が異常なんだ。ただ……それをわかって欲しい」


「うん……ごめん」


「あのう、まるで俺が猛獣みたいな感じで話がまとまってるんですが?」


「違うのか?」


 ひどい!

 しばらくすると弓を持ったエルフが俺たちを囲む。

 武装した集団が来たらそりゃ警戒するわ。

 すると男の中で一番豪華な衣装を着た男が前に出た。

 男はビクッと震えた。


「貴公ら……そのお方は……一体」


 その視線の先には楓。


「え……わたし?」


 そっかー、そういや楓って聖女の子孫だっけ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ