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第97話 祖父母(レティア方)に会いに行こう

 あれから数日が経ち、玲奈の編み物はエミルを通して、近所中に知れ渡り、今では近所の女性陣が習いに来るほどとなった。

 そんな中、その噂を聞きつけた職人街の服飾職人のターナーが玲奈と契約したいとやって来た。

 それにより玲奈の編み物はバイドルの服飾店において販売されることとなった。

 また、それと同時に毛糸を紡ぐ技術を確立させた幸も同じくターナーと契約をすることとなった。


 それを受けたキルスはそろそろ大丈夫だろうと思うようになった。

 そのため、玲奈と幸がやって来たことで止めていたことをやろうと考えた。


「それじゃ、行ってくるよ」

「父さんと母さんによろしく」

「ああ、わかった」

「いってらっしゃい」

「お気を付けて」


 キルスは現在街の門でレティアと玲奈、幸の3人から見送られていた。

 他の家族はというと、家を出るときにすでに見送られている。


 そんなわけで、キルスはシルヴァ―とともにバイドルを旅立った。


 さて、そんなキルスがどこに向かうのか、それはレティアが言っていたように、レティアの両親、つまりキルスにとって祖父母(レティア方)に会いに行くというわけだ。

 これは、元々、ファルコの両親であるフェブロとアメリアを連れてきた翌日の休日を挟んだ日に向かうはずであった。

 しかし、玲奈と幸という、キルスの前世である地球の日本とちがいを探す方が難しいほどよく似た世界から来た2人を保護し、エリエルに任されたからだ。

 その2人がまずは家族に馴染むまではとキルスが側にいたわけだが、その2人もバイドルで服飾関係などで仕事を見つけキルスの家族としてすっかり馴染んだことで、問題ないだろうと判断した。


 ちなみに、今回の旅にキルスの兄弟の誰かが同行していない理由は、単純に遠いからだ。

 レティアの故郷はキリエルン王国の南西部に存在し、バイドルからだと馬車では数か月はかかる、シルヴァ―でも3日はかかる計算となったからだ。

 尤も、もしキルスの幼い兄弟の誰かが一緒の場合、シルヴァ―も速度を落としての移動となるために4日はかかるそうなると、さすがに幼い子供では飽きたりと色々問題が発生すると考えられたために今回はキルスのみとなった。



 そんなキルスの道中は、特に何かトラブルがあるわけでもなく、順調なものとなりすでに眼下にはレティアの故郷である、キリエルン王国南西部トゥメイル辺境伯領、領都トーライドが見えてきた。


「あそこがトーライドか、やっぱり辺境伯領の領都だけあって、でかいな」

「アウン」


 キルスのつぶやきにシルヴァ―がそうだねと言わんばかりに吠えた。


「それじゃ、シルヴァ―あのあたりに降りてくれ」

「バウン」


 キルスの指示を受けてシルヴァ―はトーライドから離れた荒野に降り立った。


 そこから、キルスとシルヴァ―は街道まで出てから並んで歩き始めた。


「爺ちゃんと婆ちゃんてどんな人だろうな」

「バ、バウン、バウ、バウ」


 キルスとシルヴァ―は並んで祖父母がどんな人だろうと話を死ながら歩ていた。


「んっ?」


 その時、街の方から複数名の警備兵と思われる集団が武器を手にキルス達の元に向かってきていた。


「なんかあったのか」

「アウン?」


 警備兵の様子はまるで、魔物などが街に迫ってきているような切迫したものであったことから何かあったのかとキルスは周囲を見渡してみた。


「何もないな。シルヴァ―、感じるか」

「バウ?」


 あたりを見渡してみてもそんな魔物の気配はしなかった、シルヴァ―も同様で首を傾げていた。


「いたぞっ、囲め!」


 警備兵たちは、キルス達を見つけると一斉に囲み始めた。

 どうやら、彼らの目的はキルス達であったようだ。


「なんだ?」

「アウン?」


 突然のことにキルス達は意味が分からず混乱した。


「いまだ、放て!」


 そんな混乱しているシルヴァ―を見た部隊長はいきなり部下の攻撃命令を発した。


「なっ、まじか!」


 それを見たキルスはすかさずエスプリートを抜き放ちシルヴァ―に迫りくる魔法を切りはらった。


 魔剣であるエスプリートにはこういった魔法を切りはらうという芸当も出来るのだ。


「なっ、貴様、邪魔をするか!」

「お前らこそ、いきなりなんだ。こいつは、俺の従魔だぞ」

「ジューマだと、何を言っている。そこをどけ」


 従魔というものは非情に珍しい、中には従魔とは何かを知らない者がいてもおかしくはない。

 しかしだ。


「おいおい、まじかよ。警備兵だってのに、従魔のことも知らないだと、ふざけんなよ」


 警備兵足るものが従魔の存在を知らないのは問題だ。

 ましてや、その従魔にいきなり有無を言わせず攻撃をするなど、あってはならないことである。


「ちっ、仕方ない、おい、このガキを拘束しろ」

「はっ」


 キルスも腹は立ったがこの者たちが正規の警備兵である以上下手に手を出すわけにも行かず、今はおとなしく拘束されることになった。


「バウン」

「シルヴァ―、今は、こらえろ、ギルドに任せるしかない」

「アウ」


 こうして、キルスとシルヴァ―はなぜかいきなり警備兵に逮捕されることとなった。

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