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第89話 新しい家族

 元の世界には帰れない、玲奈と幸にとっては非情な話であった。


「僕の方でも出来る限りのことはさせてもらうよ」


 それがせめてもの償いと言わんばかりにエリエルは2人に告げた。


「出来る限りですか。でも、それって、何を」

「そうだね。まずは、2人の体を作り替えようと思う」

「体を?」


 エリエルの言葉を聞いて玲奈と幸は首を傾げた。


「うん、君たちの現在の体は元の世界のままだからね。そのままじゃ、将来子供を産もうと思っても、子供を作ることができないんだ」

「どういうことでしょう」


 将来のこともあり、幸がそう尋ねた。


「君たちとキルス君たち見た目は同じ生き物だけど、厳密に言えば別の生き物なんだ。遺伝子っていえばキルス君と玲奈ちゃんはわかると思うけど」

「ああ、そういう」

「何となくわかります」

「?」


 幸だけは遺伝子と聞いてもよくわからなかった。


「そもそも別の神が作った存在だからね。遺伝情報が全く違うんだ。だから、子供を作ることができないというわけだね。まぁ、詳しくは省くけど、そういうものだと思ってもらえればいいかな。まぁ、そんなわけで、君たちの遺伝子をこの世界に合わせて書き換える必要があるんだ」

「は、はい」


 エリエルの説明を聞いても幸だけはよくわかっていないという風に反応した。

 それはそうだろう、幸はその姿からもわかる通り、キルスや玲奈がいた世界から大体200から300年前、つまり江戸時代の人間となる。その頃には遺伝子という研究はなかったし、キルス達のように異世界に対する考えも存在しなかった。そんな時代が幸にとっては現代だったのだ。


「ということで、行くよ」


 エリエルはそういってから指をぱちりと鳴らした。

 すると、玲奈と幸の体が淡い光を放った。


「!」


 2人を包む光はすぐに収まったが、そこには先ほどと全く変わらない2人が立っていた。


「これで、終わり」

「なにが、変わったのでしょうか」


 当の本人たちも自分たちの何が変わったのかがわからないようだ。


「まぁ、あまり変化を付けても戸惑うからね。でも、身体能力が飛躍的に上がっているから、後で確認して見るといいよ。あと、今回は例外ということで1つスキルを与えたから」

「スキル、それって、何ですか」


 スキルと聞いて少しワクワクしている玲奈であった。


「翻訳スキル。これがあればこの世界の言葉がわかるようになるよ」

「ほんとに、よかったー」


 玲奈も幸もキルスからこの世界は別の言葉を話していることを聞いていたし、何より先ほどキルスが家族と話をしているのを聞いたところ、確かに知らない言葉であったことを確認していた。

 それを一から教わって学ばなければならないと辟易していたところに翻訳スキルの獲得である。これは玲奈にとっては嬉しいことであった。

 ちなみに、幸はこれまでの説明を聞いても、予備知識がないためにさっぱりわかっていない。

 それを感じ取ったキルスは後でちゃんとした説明をした方がいいだろうと思っていた。

 その後、玲奈によりいくつかの質問を繰り返したところで、エリエルが言った。


「そろそろ、時間みたいだね。ということで僕は帰るよ。最後に玲奈ちゃんさっちゃん、改めてごめんね。キルス君も2人をよろしくね」

「はい、任せてください」

「エリエル様、ありがとうございました」

「ありがとうございます」

「いいよいいよ、僕たちの責任だしね。ああ、そうそう、キルス君、これいうかどうか迷ったんだけどね。結果だけ言っておくよ。かの国はキルス君のことが露見してね。周辺諸国からの反感により滅んだよ。それじゃ、またね」


 エリエルは最後にそういって姿を消した。

 かの国、つまりはキルス、いや、護人を召喚して利用し、罪を擦り付けて処刑したハエリンカン王国のことである。


「あっ、ちょっ、エリエル様」


 思わぬ話しに慌てるキルスであったが、その時すでにエリエルの姿はなくキルスの言葉がむなしく響くのであった。


(かの国って、あそこだよな。滅んだのか。まぁ、自業自得だよな)


 キルスは内心そう考えそれ以上このことを考えることをやめた。


「さてと、爺ちゃん、婆ちゃん、もうエリエル様帰ったよ」

「う、うむ、はぁ、まさか、このワシがエリエル様に拝謁出来る日が来ようとはな」

「え、ええ、緊張しましたね。あなた」

「あ、ああ」


 キルスの言葉を聞いて2人ははぁっと息を吐いた。


「えっと、それで、話は聞いていたと思うけど、改めて説明すると」


 キルスはそこで玲奈と幸のことを簡単に説明した。もちろんこれは幸自身にもする必要があった。


「ということで紹介するよ。でも、その前に、キャシア、ミレア、ちょっとこっちおいでー、あとシルヴァ―も来てくれ」

「なーに」

「おはなしおわったのー」


 キルス達が話を始めたときから2人はシルヴァ―と遊び始めていた。


「ああ、終わったぞ。これから、このお姉ちゃんたちを紹介するからな」

「うん」

「まぁ、ということで、こっちが玲奈で、こっちが幸だ」

「初めまして、玲奈と言います」

「お初にお目にかかります。幸と申します」

「うむ、よろしくな。ワシはキルスの祖父でフェブロという、こっちは妻のアメリアじゃ」

「うふふっ、よろしくね」

「はい」

「こちらこそ、よろしくお願いいたします」

「っで、この2人が、双子の妹でこっちがキャシア、っでこっちがミレア」


 キルスはそういって妹たちをそれぞれ前に出しつつ玲奈と幸に紹介した。


「まだ、父さんと母さんに確認してないけど、この2人は家の新しい家族になると思う」


 キルスの両親の性格なら話を聞けば受け入れる、そう確信するキルスであった。

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