第85話 父の故郷~散歩~
朝食を食べたキルス達は、家族そろって街に繰り出した。
「まずは、ギルドに顔を出してくる」
「はやくしてねー」
「いってらっしゃい」
キャシアに早くするように言われ、アメリアに送られてキルスはギルドに入っていった。
コロッセロンのギルドは街が小さいだけあってバイドルと比べても規模が小さいギルドとなっている。
といっても、作りそのものは同じなのでキルスは迷うことなく受付に向かった。
もちろん、その間ギルドに詰めていた多くの冒険者たちが初めてみるキルスに注目していた。
「いらっしゃいませ、初めての方ですよね」
「ああ、滞在の報告をしようとおもってね。これ、ギルドカード」
「はい、失礼しますね」
受付嬢は慣れた手つきでキルスからカードを受け取って、一瞬固まった。
「し、失礼しました。えっと、では、手続きをかんりょうします。何かご依頼を受けますか」
キルスのカードに書かれたCランクの文字に一瞬戸惑ったもののすぐに立て直して、何か依頼を受けるか尋ねた。
「そうしたいのは山々だけど、あるか?」
こういった小さな街にはバイドルも同様だが、キルスが受けられるようなCランク依頼はないことの方が多い。
「えっと、すみません、今現在はないですね」
やはり存在しなかったようで受付嬢も申し訳ないと謝罪した。
「いや、気にしないでくれ、元からそうだろうと思っていたし、今日はこれから用事もあるしな。ああ、でも、数日ぐらいは滞在するつもりだから、出てくれば受けるし、無ければ消化依頼でも受けるさ」
「ほんとうですか、私たちとしてはありがたいですが、キルスさんにお願いするのは気が引けるのですが」
通常Cランクとなれば消化依頼を受けることはほとんどしない。
「ランクを上げるための実績作りだからいいんだよ。まぁ、というわけだから、頼むよ」
「はい、こちらこそ、よろしくお願いします。それと、宿はお決まりですか。ギルドから紹介することもできますが」
「いや、この街には祖父母が住んでてな。そこに世話になることになってる。場所は、カンラ地区のドラップ通りにあるフェブロって人の家だ」
「はい、かしこ参りました。では、御用があるときはこちらに連絡をさせていただきますね」
「ああ、頼む」
こうして受付が終わったところで、不意に奥から1人の女性が慌てたように出てきた。
「ねぇ、今ちょっと、聞き捨てならない言葉が聞こえたんだけど」
「先輩、どうしたんですか」
やって来たのは40代ぐらいのギルド職員だった。
「ごめんなさい、あなた今フェブロさんの家にいるって、しかも、祖父母って言わなかった」
「そうだけど、フェブロは俺の祖父だからな」
「ちょ、ちょっとまって、フェブロさんってあの国軍大佐のよね」」
「そうだったみたいだな」
キルスも相手の年齢からまさかと思っていた。
「やっぱり、でも、そうするとあなた、お父さんの名前って、もしかしてファルコじゃないわよね」
キルスの思った通りファルコの知り合いのようだ。
「そうだ、父親はファルコって料理人だよ」
「うそでしょ。まさか、あのファルコに……」
職員の女性は困惑した。
「えっと、父さんの知り合い?」
分かってはいたがキルスは一応尋ねた。
「え、ええ、ごめんなさい。あまりの衝撃に驚いてしまって、えっと、ええ、確かにファルコとは知り合いよ。といってもそこまで付き合いがあったわけではないけどね。彼有名だったから」
「ああ、あの顔じゃな。目立つよな」
「ええ、かなりね。はぁ、そう、彼元気にしているの」
「まぁ、元気といえば元気だろうね。今は料理人として食堂をやってるよ」
「そう、あとで、みんなにも伝えておくわ」
それから、キルスはその女性と別れギルドを出ていった。
「あっ、キルにーちゃ」
「おそーい」
「悪い悪い、なんかギルドに父さんのこと知っている人がいたよ」
「おとうさんの、そんなひといるんだ」
何気に酷いことをいうミレアであった。
「そりゃぁ、ここは父さんの故郷だからな、知り合いの1人や2人はいるだろう」
「そっかー」
そのあとキルス達は街の散歩をすることになったわけだが、やはりシルヴァ―がいるだけあってかなり目立っていた。
だからといってみんな出かけるのにシルヴァ―をおいていくという選択肢はこの家族には一切なかった。
ということで、目立ちながらも5人と1頭は買い物をしたり、街に設置されていた公園で遊んだりをしていた。
買い物は、アメリアが張り切った。
突然できた孫、しかも孫娘とあって、可愛いものを身に付けさせようと頑張った。
キャシアとミレアもそんな祖母に同調するように楽しんで着せ替え人形をしたり、多くをねだっていたのをさすがにキルスが止めた。
そんな風に過ごしているといつの間にか昼となり、近くの店で昼食を食べた後、再びキルス達は散歩をつづけたのであった。
そして、昼もだいぶ過ぎて少々小腹が空いてきた時間となってきたその時、キルス達に声をかけてきた者がいた。
「おっ、昨日の嬢ちゃんたちじゃねぇか」
声をかけてきたのは昨日キルス達がフェブロの家のある地区を尋ねた果実水の屋台の店主だった。
「あら、トルト君じゃない」
「えっ、小母さん、って小父さんもいるじゃないっすか、えっ、どうして」
当然ではあるが店主とフェブロたちは知り合いであった。
「祖母ちゃんの知り合い」
「ファルコ、あなたたちのお父さんのお友達よ」
「へぇ」
「はっ?」
アメリアの説明に一番踊りたのはトルトであった。
「ちょっと待って、小母さん、今、こいつらの親父って、もしかして、いや、ちょっとまって、まさか、ほんとに?」
半分パニックになるトルトである。
「ふふっ、そうよ、この子たちは私たちの孫、ファルコの子供たちよ」
「まじで。うそだろ」
トルトにとってはかなりな衝撃的な事実であった。
その後、キルス達はトルトから子供頃のファルコの話を聞いたり、現在のファルコの話をしたりして過ごし、夕方となったために帰宅したのであった。
ちなみに、トルトが何に驚いたかというと、ファルコの顔と性格から結婚出来るとは思っていなかったし、何より自身が独身であったことで、負けたということである。
しかも、話を聞けばその相手であるレティアが絶世の美女であるということからもうらやましくもあったし、子供が13人というのを聞いて、驚きつつも逆に心配になったのであった。
それがキルス達にとっては、本当に友人なんだなと嬉しくもあったのであった。




