第73話 登録と帰宅
バイドルに帰ってきた4人と1体を出迎えたのはニーナであった。
それから、オルクたちと別れたキルスとニーナは揃って冒険者ギルドに向かって歩いていた。
「改めて、おかえり、キー君、バイエルンはどうだった?」
歩き始めるとニーナはキルスにさっそくバイエルンでのことを聞いてきた。
「ああ、よかったよ。タニヤにもずいぶんと世話になったし、ああ、そうそう、後で渡すけど、タニヤから手紙を預かっているよ」
「あら、そうなの」
今は歩いている最中であり街中、そんなところで手紙を出せない。
「あとは、そうだなぁ」
それから、キルスは簡単にではあるがバイエルンでやって来た依頼の話などをしていった。
本当なら、ここで領主にあった話や第二王女の話をしたいところではあるが、先ほども言ったようにここは街中、そんなことも出来るはずもなく、仕事の話となったわけだ。
そうして、話しているうちにギルドにたどり着いた。
「それじゃ、シルヴァ―ちゃんはそこで待っていてね」
「バウン」
ニーナに撫でられながらそういわれてシルヴァ―は素直にうなずいた。
「シルヴァ―、後でな」
そうして、ギルド内に入ってきたキルス達であったが、当然ギルド内ではキルスが連れているシルヴァ―の話題で持ちきりであった。
「おい、キルス、あの魔狼はなんだよ」
「ちょっとあってな。従魔にしたんだ」
「従魔って、本当にあるんだな」
従魔というものは、そもそも魔物に懐かれなければならず、そんなことは滅多にないために数がかなり少ない。
大きな街でも、1人居るかいないかといったほどだ。
「ほら、キー君、久しぶりだから話したいのはわかるけど、シルヴァ―ちゃんの登録が先でしょ」
「あっ、うん、今行く、というわけだから、後でな」
「おう、ニーナに言われちゃ仕方ねぇな」
冒険者たちもニーナに言われればこれ以上キルスを引き留めておけないと理解していた。
「悪い、ニーナ姉さん、それで、登録ってどうするんだ」
「これに必要事項を書いて頂戴」
そういって、ニーナが渡したのは1枚の紙そこには従魔登録申込用紙と書かれていた。
「えっと……」
キルスはニーナに渡されたペンを手に持ち記入を始める。
記入事項は、まず契約者の名前、つまりキルスと書き、従魔の種族と名前といった内容だった。
「書いたよ、ニーナ姉さん」
キルスは書いた申込用紙をニーナに渡した。
「はい、えっと……うん、はいこれで、シルヴァ―ちゃんの登録は完了、あとはこれね」
そういって、ニーナは赤い石を取り出してキルスに渡した。
「なに、これ」
「これは、従魔石というものでね」
ニーナの説明によると、従魔は一見すると普通の魔物だ。そんなものが街中を歩いていたら大騒ぎとなり警備兵などが飛んできて下手したら討伐されてしまう。
それを防ぐ為にわかるところにこの従魔石を身に付けさせることでその魔物が従魔であるという証明となる。
「なるほどね。じゃぁ、わかるところが良いか」
「そうね。首輪に着けてあげればいいと思うわよ」
「そうだな。そうするよ」
それから、キルスはニーナにタニヤからの手紙を渡した後、夜に帰ってくるというニーナの言葉を受け、また夜に話そうという会話をしてから、先ほどの冒険者たちとこれまた簡単に話してからギルドを出た。
「シルヴァ―、待たせたな」
「クウン」
キルスが姿を見せるとシルヴァ―は嬉しそうにキルスに鼻をこすり着けて鳴いた。
そうして、シルヴァ―と戯れた後キルスは自宅に帰ることにした。
「ただいま」
「おかえり、キルス」
キルスを出迎えたのは接客をしていたエミルであった。
「兄さん達は?」
キルスは先に帰ったはずのオルクたちのことを尋ねた。
「奥よ。今お母さんと話をしているわよ」
「そっか、それで、姉さん、シルヴァ―どうすればいい、庭に直接行かせて良い」
「ああ、うん、いいわよ」
エミルの許可を問ったキルスはさっそく再び外に出てシルヴァ―を連れて庭に向かった。
ちなみに、この時エミルも接客の最中でなければキルスとともに外に出てシルヴァ―を見てみたかったが、仕事中のために仕方なかった。
「あっ、キルスにいちゃん」
「おかえりー」
「おかりー」
「わぁ、おっきいぃ」
「おっきい、わんわんだー」
「キルにーちゃ、なにそれ?」
キルスが庭に入るとそこで遊んでいたキルスの弟妹達が一斉に集まってきた。
「ただいま、みんな元気だったか」
「うん」
「げんき―」
「ねぇねぇ、わんわん、わんわん」
元気一杯に応えながらもやはりシルヴァ―が気になっているようだった。
「ああ、こいつは、シルヴァ―って言ってな、兄ちゃんの従魔って、わかるか、えっと、そうだな。新しい家族だ」
「かぞく?」
「そうだぞ。仲良くするんだぞ」
「うん」
「やったー、かぞくー」
それから弟妹達は一斉にシルヴァ―に飛びついた。
体長3m近くもある巨大な狼に恐れもせずにすぐい飛びつくところはさすがにキルスの弟妹達である。
そんな様子を見ていたロイタは苦笑いをしながら庭に出てきた。
「おかえり、キルス兄さん」
「おう、ただいまロイタ」
キルスはそういってロイタの頭を1撫でするのであった。




