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第65話 アクレイド商会の企み

 第二王女であるカテリアーナとの邂逅を終えたキルスはトルレイジ亭のブースへと戻っていた。


「おかえり、キルス兄さん」

「おう、ただいま。凄い人数だな」


 キルスが見たのは思っていた以上に集まった客だった。


「うん、おかげで、大忙しだよ」


 忙しいと言いつつ笑顔のキレルであった。


「俺も手伝うよ」

「ありがとうキルス君」


 ラナからのお礼を受けたキルスは、その日最後まで店の手伝いをして過ごすことになる。



「ふぅ、疲れたぁー」

「ふふっ、ありがとう、キレルちゃん、キルス君」


 キレルが疲れ切って椅子に座り込むと、すかさず水を持ってラナがねぎらった。


「ラナお姉ちゃんもお疲れぇ、凄い人だったね」

「ええ、これも、キルス君のおかげね」

「はははっ、俺は基本を教えただけだよ、あとは、兄さんや料理人たちの能力だろ」


 これは事実であった、確かにキルスはハンバーガーやサンドウィッチのことを話した。しかし、それらを形にして、進化させ絶品に仕立て上げたのは料理人たちの能力あっての物であった。


「ううん、それでも、キルスの知識(考え)が無かったら無理だったよ」


 オルクはそういいながらキルス達と同じ席に座った。


「まったくだ。助かったぞ、キルス」


 オルクとデイケスにそういわれて少々気恥ずかしいキルスであった。



 次の日、キルスは前日のこともあり朝からトルレイジ亭の手伝いに出ていた。


 しかし、前日とは違い、今日はなぜか客の数がまばらであった。


「今日は少なくないか」

「おかしいな」

「何かあったのか」

「何か、何がだ」

「さぁ」


 あまりにもまばらのために、キルス達は揃って首を傾げていた。


「ああ、大変だおやっさん」


 ここで、デイケスの弟子であり、オルクにとっては兄弟子に当たるポームが走ってやって来た。


「どうした」

「どうしたの、兄さん」


 ポームの様子にデイケスとオルクもただ事じゃないと構えた。


「むこうで、アクレツ亭の奴らが、家と同じ物を出しているんだ。しかも、家よりずっと安くしてやがる」

「それは、まぁ、予想出来たな」

「ああ、しかも、奴らはその場で肉をスライスして、新鮮な肉を使っていることやくず肉をごまかすために細かくしているのではないとか言ってやがるんだ」


 それは、暗にトルレイジ亭の肉は新鮮ではない上にそれをごまかすためにミンチを使っているということをうたっているんだろう。


「家も、新鮮なお肉だけど、ミンチだし事前にしているからね」

「そうだな。しかも、客では新鮮な肉かどうかなんてわからいからな」

「はい、そうですね」

「お父さん、大変」


 今度は、暇になったからとキレルと他の店を見に行っていたラナが騒がしく帰ってきた。


「今度はなんだ」


 ラナの様子にまたただ事ではないと嫌な予感がしつつ、走ってくる自身の娘に尋ねた。


「向こうで、こんな紙切れが配られているの」


 そういってラナから受け取った紙を見て、デイケスは今日に限って暇な理由が分かった。


「……おいおい、まじか、ふざけやがって」


 デイケスの怒りを見たオルクとキルスは、どうしたんだと思いながら尋ねてみた。


「どうしたんだ、デイケス小父さん」

「ああ、こいつを見てみろ」


 どれどれと、キルスはデイケスから受け取った紙を見てみる。

 すると、そこにはトルレイジ亭が食材を手に入れることができずに、古い食材やくず肉をごまかすために細かくしているという、根も葉もないことや元々ハンバーガやサンドウィッチはアクレツ亭が考えていたもので、トルレイジ亭にアイデアを盗まれたと書かれていた。


「食材のことはともかく、アイデアはどう考えても無理があるな」


 もちろん食材についても文句を言いたいが、何より、アイデアに関してはこちらが早く売り出しているのにパクったも何もないだろう、キルスは内心そう突っ込まずにいられなかった。


「まったくだね。これは、キルスだからこそ思いついたものだしね」


 オルクもキルスに同意している。


「それで、どうするんだ」


 キルスはこの場を取り仕切るデイケスに今後を尋ねた。


「うーん、そうだな。まずは、俺たちもこの場でミンチを作るのがいいと思うが、値段については、あまり下げられんからなぁ」


 デイケスは、この状況に大いに悩んでいる。


「あら、どうかされたのですか」


 そんなデイケスを見るキルスにそんな声がかけられた。

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