第60話 コントラル祭り
「なに、トルレイジ亭の屋台が出ているだと」
アクレイド商会の商会長ザンゲフが報告を持ってきた部下に吠えている。
「は、はい、また、その、珍しい物を出しているとかで、は、繁盛しているということです」
「なんだと、まさか、いや、ありえない、奴らには食材がないはずだ」
アクレイド商会は今回トルレイジ亭に食材が行かないよう手を回しいていた。にもかかわらずトルレイジ亭は見たこともない料理を出し繁盛しているという、ザンゲフからしたら、予想外のことが起きている。
「どういうことだ」
「わ、分かりません、現在調査中です」
「くそっ、今回だけは、奴らに負けるわけにはいかんのだ」
コントラル祭りはタダ宴会をする祭りだが、トルレイジ亭やアクレイド商会などの店を出すものに取っては、売上勝負の場となる。
それというのも、やはりここで売り上げが最も高い店はその後3年間は箔が付くからだ。
そんな、勝負においてアクレイド商会は前回、前々回とトルレイジ亭に負けていた。
また、それだけではなく今回だけは、負けられない理由があった。
「なんとしても、どんな手を使ってでも勝て」
「は、はい」
部下は返事をすると、急いでザンゲフの執務室を出て行った。
一方、ライバルであるアクレイド商会がそんなことを考えているとも知らず、トルレイジ亭は前日にキルスが考案したハンバーガーとサンドウィッチが売れに売れていた。
「次、上がったよ」
「はーい、お待たせしました」
「うほぉ、美味そうだなぁ」
ハンバーガーを受け取った男は喜び勇んで屋台を離れていった。
「やっほー、キレルちゃん、凄い繁盛しているね」
あまりの店の繁盛ぶりにキレルも手伝っていた。
そんな様子を見て声をかけたのは、ヴォルカの剣のメンバーであるシレッタだった。
「シレッタさん、キルス兄さんが考えたメニューが凄くおいしいから、お客さん凄いの」
キレルは知り合いであるヴォルカの剣のメンバーがやって来たことで、嬉しそうに話し始めた。
「キレル、その人たちが、以前言っていた人たちかい」
そんなキレルの様子を見たオルクが手の空いたすきを見てキレルに尋ねた。
「うん、街に来るときに知り合ったの。ヴォルカの剣っていう人たちだよ」
それから、キレルは1人1人オルクに紹介していった。
「ね、ねぇ、この人、キレルちゃんが会いに来たっていうお兄さん」
一方シレッタはオルクを見て若干顔を赤くしながらキレルに耳打ちした。
「そうだよ。オルク兄さん」
「……か、かっこいい」
ハンナもまた、オルクを見てポーっとしていた。
「けっ」
「ははは」
そんな2人の様子にベントは悔しそうに舌打ちし、ソレイルは乾いた笑みを浮かべていた。
「初めまして、オルクです、妹と弟がお世話になったみたいですね」
オルクはキレルの頭に手をおきながらヴォルカの剣に対して自己紹介をした。
「いえいえ、世話になったのは、私たちです。キルス君が来なかったら、私たちこの街に来ることも出来なかったと思うし」
「そうそう、助かった」
「それは、認めるぜ」
「そうそう、まったくだな」
こればっかりはヴォルカの剣全員の総意であった。
「そう、それはよかった」
「おい、オルク」
「あっ、はい、すみません、仕事があるので、僕はこれで」
「あっ、はい」
オルクはデイケスに言われてすぐに仕事へと戻っていった。
「忙しそうだし、私たちもそろそろ行くね」
「うん、私もお手伝いがあるから」
「そっか、頑張ってね」
「そういえば、キルスのやつはどうしたんだ、見ないけど」
ここで、ソレイルがキルスがいないことに気が付いてキレルに尋ねた。
「ああ、キルス兄さんは、お仕事に出てる」
「こんな時もかよ」
「頑張ってるんだねぇ」
「そっか、それじゃね。キレルちゃん、今度トルレイジ亭に行くね」
「うん、待ってる」
こうして、ヴォルカの剣は忙しそうにし始めたキレルに背を向け街へと向かって行った。




